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 そうしていると、唐突に頭上から声が降って来る。

 木の上に横たわりながら喋っているのは伊黒であり、その内容は冨岡も隊律違反を犯したのだから処罰すべきだ、というものだった。炭治郎が鬼を庇ったのは聞いていたが、冨岡も共に鬼殺を邪魔だてしたというのは正真正銘初耳だ。



「どう処分する、どう責任を取らせる、どんな目にあわせてやろうか」

「普段の鬱憤がよくわかるセリフだぜ」

「黙れ死ね」

「やっぱ伊黒風当たり強いよね!?」



 鋭く入った悪口に、納得がいかないAが強く叫んだ。昔彼のことを助けたことがあるというのに、何故か二人の仲は悪い。というか伊黒が一方的に彼女のことを嫌っているだけである。

 ああダメだコイツら。しのぶは痛む頭に手を当て、炭治郎に向かい「何故鬼殺隊員の身でありながら鬼を連れているのですか?」と問うた。バッと顔を上げて話そうとした直後、先程のAの蹴りが入った場所に激痛が走り咳き込む。


 ゆっくりで大丈夫ですよ、としのぶは痛ましそうに言った。



「俺の妹は鬼になりました、だけど人を喰ったことはないんです。今までも、これからも──人を傷つけることは絶対にしません」

「くだらない妄言を吐き散らすな、そもそも身内なら庇って当たり前」



 伊黒、悲鳴嶼、宇髄が三者三様の言い方で炭治郎のことを『信用できない』と断じる。柱の内ほとんどの者がこの意見であったし、それはAも同様だった。

 「かま……、ああ面倒だな、少年さあ」と地面に転がっている炭治郎と目を合わせるように屈んだ。長く伸びる赤髪が地面につくほどで、炭治郎は彼女の美し過ぎる美貌に少しだけ見惚れる。




「ホント? 今少年が言ったこと、ホントのホント? ねえ、違うだろ。絶対に違うだろ。少年、その妹に、『襲われかけた』だろ」

「ッ──」

「あ、顔色変わった。はは、やっぱ嘘じゃん」




 けらけらと無邪気に嗤うAに、炭治郎は絶句する。今の会話の流れが、よく理解できなかった。見てきたかのようなことを言ったかと思えば、まるで今のがハッタリだったかのように。

 炭治郎が言わんとしていることを察したのか、「あぁ」と赤髪が揺れ動く。そして言った。




「今の嘘。だけどお互い様だね──少年も嘘吐いたから」

「ち、違う、禰豆子は本当に」

「体を傷つけてなくても、少年の心は傷ついたろ? なら君が嘘を吐いたことに変わりない」




 自分で自分の首を絞めたな。Aはそう笑った。


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白夜の世界(プロフ) - ふぐひらめさん» これたぶん何柱って考えるの面倒だったからこうなってますね(笑)。というか主人公の名前を最初に双柳に設定しちゃったからなぁ〜〜って感じがします。ずいぶん前の作品になりますが読んでくださり嬉しいです……。 (2021年7月31日 19時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ - 樹柱って言われると…死ぬ前シリーズの榊原ししょー思い出すなぁ……… (2021年7月31日 16時) (レス) id: 0b66878cc1 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - 白夜の世界さん» わかります、わかります!!(ーー゛)ウンウン 同じような単語とか言葉とか並べるってなんか響きいいですよね!!?(語彙力消滅☆)今更気づいたんですが、私、あなた様の作品割と読んでました(*゚∀゚) そして気づきました。私、作品だけじゃなく作者様も好きです((( (2020年9月11日 21時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 水城舞梨亜さん» 題名は結構悩んだんですよねー!パッと決まるのもあるんですが、今回はテーマが曖昧だったので……。人生色々あるけど、もうなんとかやってこう、という思いで様々な単語を続けました。最後を「て」で止めてるのが、終わらないって感じで自分的には好きです(笑)。 (2020年9月11日 20時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
水城舞梨亜(プロフ) - あの、すごくこの作品好きです。長い題名だけど、短い短編の中にちゃんと入ってて。もう最期かもしれないけど、会えないかもしれないけど、生きていこうっていうのがすごく感動っていうか、泣きたくなるっていうか…(語彙力が…)まとめるとこの作品好きってことです! (2020年9月10日 22時) (レス) id: 0e4689ecab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年8月30日 13時

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