#33 心底、 ページ34
.
『どけよ』
「──！ あ、あなたはっ……！」
『あぁ、見覚えがある奴がいたんだな。丁度いい。さっさと案内してくれ』
回想は此処らで終了とする。私は現在彼と別れて、マフィアビルへと来ていた。中に入っても見向きもされないぐらいに中は混乱を来していた──というより、そこら中に凄惨な死体が転がっていた。
ほとんどが刃物で切り裂かれたような致命傷を負っているから、やつがれ君が倒した人達の亡骸だろう。昔は死体を一目見るだけで吐いていたのに、ただ顔を顰めるだけで終わった私の心はひどく冷えてしまったと思う。
黒服の人は��拳銃を向けた��私を驚きの目で見ていた。
まぁ、昔はマジでこんなことするなんて考えもできなかったからなぁ……。流石に自分でも諦めの言葉すら出ねえわ。
だけど、とにかく私は最上階に上がりたかった。最上階──というか、屋上。屋上に彼らがいるということは、薄れた記憶の中でも慥かなものだった。とにかくそこに私は行かねばならない。そして何かを──それが何か判らないのだからタチが悪い──止めねばならない。
勿論殺す心算はない。というか殺すことは普通に心理的抵抗が大きすぎてできない。
だが撃つことならできる。腕や足を撃って止血をしてやれば少なくとも死ぬことはない。私はそれを探偵社に入ってから理解した。故に今なら人を撃てる。
何の皮肉だろうかなんて考える。人を撃てないからマフィアを抜けたのに、今マフィアビルに侵入する為に人を撃とうとしている。矛盾といっても良いレベルだ。
そして黒服の彼は、私が本気だと悟ったらしい。息を呑んで、冷や汗をその額に浮かばせ「了解……しました」と震える声で云った。
『ん、助かるよ』
「──は、い」
ほっとした笑みを浮かべたまま決してその銃口を彼から離さないようにしている私に、黒服の彼は心底ぞっとした目を向けた。
.
#34 昇降機から見たのは→←#32 まあぶっちゃけて云えば
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うﾞい(プロフ) - 今更ごめんなさい。はじめまして。初コメです。面白すぎて一気読みしてしまいました。主人公も終わり方も天才的です。本当にありがとうごさまいます。ありがとうございます…… (2022年11月25日 18時) (
レス) @page43 id: 4eb6cf0149 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - over the rainさん» 毎日読んでくれましたか！！先に全部書き終えておいて一日更新にしておいた甲斐がありました……！本編はそうはいかないので三日毎更新ですが、これからも上手く書けるように頑張りたいと思います。 (2020年7月8日 15時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - Beast完結（？）おめでとうございます！毎日楽しみに読んでいました！本編も応援してます！ (2020年7月8日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 桜ノ呼吸の使い手さん» コメントありがとう御座います、はい完結致しましたァ〜〜！！面白く飽きのこないような作品を作っていきたいと思っているので、本編の方も頑張っていきたいと思っています。 (2020年7月7日 20時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ呼吸の使い手 - え！？こんなに面白い作品が書けるんですか！？初コメですが完結おめでとうございます！ (2020年7月7日 20時) (レス) id: e5b2323101 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2020年6月6日 17時
