【stgr】潮鳴りのする雲を抜けて２【青井らだお】

16　『離れがたい微熱』 ページ25

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「ヴァンダーマー、まじ、マジで頭がおかしすぎる！」


　院内で一斉に警察が蘇生されて、にわかに騒がしくなった病室に私の大声が響く。どうしたどうした、と皆が私を驚いた目で見つめる。松葉づえを振り回す勢いの私をどうどうといさめてくれるのはももみさん。


「おちついて〜、おちついて〜。は〜い、深呼吸しましょうね〜。松葉づえちゃんと突いてね〜」
「すーっ……はーっ……。イヤももみさんも見ましたよね！？」
「見たね〜」


　酷いでしょお、と同意を求めるように叫んだ。ももみさんは相変わらずかわいい声で私のことを落ち着けてくれている。フウ……フウ……と荒く息をする私をベッドに濃しかけさせて、「よく頑張ったねえ」と頭を撫でてくれた。こ、これがバブみ。いまならキャップの気持ちもわかる気が──しないな、それは。

　ましろさんに蘇生してもらったばかりのらだおくんは「ホントすみません……」とさっきから謝罪ばかりしている。索敵が足りなかった、自分のせいでって。いや確かにそうだけど、互いの甘えと慢心だ。らだおくんは私なら大抵の敵は殲滅できるだろうと思っていたし、私もらだおくんなら敵を見つけてくれるだろうって。


「いや、でも、ヴァンダーマーはマジでやばかった。頭、あたまホントにおかしい」
「え、なに……？ Aさんヴァンダーマーに何されたの」


　苦笑いしながら訊ねる煉先輩。松葉づえだけでなく大量の包帯も巻きつけた煉先輩は、メイン倉庫に突撃しようとしたら背後から来た車の増援に轢き殺されたらしい。やられたわ、とカラリと笑う煉先輩がいるだけで、完敗の重苦しい警察の雰囲気が軽くなった。

　ももみさんと顔を見合わせる。いつもお日様みたいな笑顔のももみさんも、ちょっと困ったように唇をへにゃりとさせた。


「や、なんか……やばい。とにかく」
「怪我の具合が一番酷かったのは爆発したらだおさんだけどぉ」うーん、とももみさんは顎に手を当てて視線を天井に泳がせる。「怪我自体が一番ぐろかったのはAさんかなあ〜」
「マジで！？ 何されたのほんとに」
「ウウ、我がついていながら……らだおがすみません、ほんとに。我が教育しなおときます」
「Aさんに土下座する覚悟はあるけどおまえに教育される筋合いはない」
「そこ……ッそこまで言う！？ けっこう、けっこう厳しい口調だったけどね今！？」


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