【stgr】潮鳴りのする雲を抜けて２【青井らだお】

・（暴力表現注意） ページ23

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　あーもーダメだ、ほんとやらかした。メイン倉庫上が取られるのはいつものことだし、先んじて行動できる犯罪者が有利なのは違いない。だけどこの場所は広くて犯罪者たちには見逃されがちで、飛行場内のぱっと見もよく観察できるからすごく良い場所だったのに。
　コツコツ、と後ろから革靴の音がする。


「Aさん。ダメでしょう、後ろもちゃんと警戒しなきゃ」
「ヴァ……、ダー、マー」


　銀髪の壮年男性が、銃を構えながら倒れ伏したままの私に近づいてきた──ヴァンダーマー。途切れ途切れの声でその名前を呼べば、彼がぐっとその身を屈める。ぴくりとも動かない私の身体を片腕でぐっと引っ張って、ほとんど屋上のふちにいた私を手前へと戻した。


「Aさん、相変わらず良い銃持ってますねー……。これ、いただきますよ」


　流れるような動作で私の装備を剥いでいくヴァンダーマー。慣れた手つきでそのまま銃弾とアーマーも奪っていく。……なんか無駄に身体触られた気がする。いや絶対こいつ無駄に触ってやがる。


「指名手配、セクハラ罪も追加してやる……」
「ふぅん？ そういうことしちゃうんだ、警察って」


　ヴァンダーマーは目を細めて立ち上がり、片足をあげた。私の身体の上、ちょうど、ついさっき銃で撃たれたところを狙うように。
　──うそ、とサッと頭から血の気が引いた刹那、勢いよく腹に靴が踏み下ろされる。


「あ゛、ぁああッ！」頭の中に雷が落ちたような衝撃。どすん、と鈍い音。「い、う、いだいッ、」
「Aさん、これヘリだれ？ ハクナツメ……か、青井らだおかな」
「い゛ぃッ、っだい、痛い！ は、ァひゅっ」


　ぐ、ぐ、と怪我の部分に体重がかかる。ダウンした後は痛覚が鈍るとはいえ、そんなことをされたらたまったもんじゃない。世界が白と黒以外の何物にも見えなくて、呼吸すら満足にできなかった。見開いた目からぼろっ、と涙が零れる。やだ、やだ、いたい、やめて。そう伝えることも痛みに阻害されている。

　苦しい。呼吸ができない。ヒュウヒュウと息をする私をさらに嘲るように、ぐりぐりと靴全体で腹を踏むヴァンダーマー。痛みがつよすぎて、それがどういうものかなんて説明ができない。ただ痛い、ただ苦しい。耐えるために手を握り締めることすら許されていない。


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