06 『訊ねる』 ページ6
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俺は溜め息を吐いた。
「マジ、マジでさ、お前……」
「はは、いや、なんかごめん」
「なんかごめんじゃねーよ……」
死ぬほど疲れた。そう言うと、ベッドで寝ている志津は苦笑した。「君が何も聞かずに電話を切ったからじゃないかな」と言われると、俺はもう何も言えなくなってしまうが。
──あれだけ急いで来たっていうのに、なんと志津は命に係わる怪我じゃなかったらしい。片腕と肩の剥離骨折、それ以外は全身打撲っていうぐらいしかないようだ。いやまあ、それでも十分ヤバいと思うんだが、イメージがドラマとかの集中治療室ってぐらいしかなかったから。
「体丈夫だな」と皮肉のつもりで言ってやれば、「ありがと」とはにかまれた。違ぇよ! 違うに決まってんだろ!! と脳内で叫ぶ。コイツは昔から皮肉が効かない奴だった。
「……で、何で?」
「何で、って」
「何で事故った」
コイツは運動神経はかなり良い。体が丈夫だというのは単なる冗談だが、学生時代は陸上の短距離走で全国行ったぐらいだ。そもそも大学ですら推薦で来たぐらいだし、道路近くの車ぐらい反射神経で避けれる。──たぶん。
志津は「流石にそりゃできないけど」と苦笑交じりに言った。流石にできないらしい。けど、と目を伏せた様子からすると、一応理由はあったらしいが。
「──電話が、来たんだ」
「あ? 電話?」
訊き返す俺に、志津は僅かに顎を引く。電話? 何の話だ?
志津はシーツの上で手を合わせた。まるで神に祈るような仕草で、そのまま顔を覆う。
「あの、家族から」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。ただすぐに思い当たる。──あの、万引き犯の、家族。あれだ。
「もう──もう、いいって」
「────」
「毎月お金をくれるの、もう、いいって」
俺は声も出なかった。まさか──そんな、ことがあったとは。あの家族はどんな思いで電話したのだろう。
……どんな思いで、今まで志津から金を受け取っていたのだろう。
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P様さん - え…、久しぶりにオリジナル作品開いたらめちゃくちゃいいじゃん!!好き!!!なんか最後の店主かっこいいな (2022年12月6日 23時) (レス) @page11 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - さくらんぼさん» オリジナルは良いぞ!!(二次創作ばかり書いている人間が言って良いセリフではない)覚えてます大丈夫です〜〜!文ストの方全く更新できずに申し訳ありません、恐らく本編更新より十五歳編の方を作るのが早いと思われます(笑)。 (2021年2月24日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - オリジナル作品こんなにのめり込んだの始めてすぎるほんと!!笑笑 一瞬ホントの話かと思うくらいリアリティが、、、!!あ、長い間浮上しなくてすいません!機種変して名前変えましたが白夜の世界を推し続けるです!!覚えてますかね、、?笑 (2021年2月24日 0時) (レス) id: 6f4309b5f2 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - めぐちさん» どうぞどうぞ是非ぜひ!占ツクって最初から連載が想定されてる、みたいな仕様になってるから短編を投下しにくいんですよね。でもまあサックリ読める方が読者も良いだろと思って短編たくさん投下してます(笑)。 (2020年12月29日 10時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
めぐち(プロフ) - うわーー!!めちゃくちゃ面白すぎてあっという間に読んでしまいました……。しばらく余韻が抜けないです。素敵な作品ですね泣。私もオリジナル作りたくなります笑 (2020年12月28日 22時) (レス) id: 0507494f21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年11月28日 17時