悲劇 ページ14
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あの賑やかな笑い声が聞きたい。
ぽかんとする父に、俺が先程届いた手紙の内容を伝えると、ふっと父上は笑いを零し、俺の頭を優しく撫でる。
「Aも、お前と同じ思いだ」
◇
そして、Aがいなくなって数ヶ月程経った頃、小芭内が先に鬼殺隊に入隊し、煉獄家を出ていくのとほぼ同時期に、母上が亡くなられた。
千寿郎は亡き母を毎晩探すように泣き、父上は人が変わったように酒浸りになった。
「俺が、しっかりしなければ」
そう決意してから、俺はとにかく孤独だった。
日中は父上や小芭内としていた鍛錬を一人で行い、
母上が作ってくれていた暖かい食事もなく、
まだ幼い千寿郎を慣れない状態で、何度も不安になりながら面倒を見る。
そして千寿郎を寝かせた後、俺は静かな部屋を見渡した。
癖になったそれは、半年前、当然のようにいた彼女の姿を探すもので、ふとした瞬間、俺は無意識にいつもやってしまう。
「A…」
シンとした部屋の中、思わずAの名前を呟くと、反響した声がなんとも弱そうな音を出す。
「…」
暗い部屋の雰囲気に取り込まれないよう、俺は部屋の電気をつけて何度か深呼吸する。
「…うむ!!
A!!俺は明日、最終選別へ行くぞ!!」
◇◇
「柱を行かせるつもりだから、沢山学んでおいで」
最終選別を難なく突破した俺が、鬼を斬るという感触に慣れてきた頃。
新しい任務で鬼の居場所がなかなか掴めず、定期連絡のため産屋敷邸に呼ばれたと思えば、御館様が俺にそう言い渡す。
血鬼術か、こちらの気配を悟られてしまうという失態をした俺は、鬼殺隊最高位である柱と送るという御館様の配慮に感謝した。
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時