悲報 ページ13
◇◇
「母上!最近、Aが姿を見せませんが
何か存じ上げますか!」
「…いえ、何も。私も心配に思っています」
最近調子が悪いと昼間から布団に入る母上に、俺は隣で正座をしながら、同じく最近姿を現さないAの話をする。
千寿郎が寂しがっているし、小芭内も心配している。
父上も娘が出来たように嬉しがっていたのに。
「少し、一宮さんに連絡をとってみましょう」
何か分かったらお知らせしますと言う母上は、小さく咳を数回する。
そんな母上に、これ以上疲れさせても悪いと俺は礼を言って部屋を出た。
◇
「杏寿郎、Aから手紙が来ています」
「!!」
父上に小芭内と稽古をつけてもらった後、玄関から来た母上にそう呼びかけられて、俺は急いで母上に駆け寄る。
そして、受け取った手紙をその場で開くと、いつもなら慌ただしいと注意してくる母上も、今回ばかりは気になるのか、こちらをじっと見ている。
「…今、とうきょうにいると書いてありますが」
綺麗な字が羅列する手紙の一行目を読みあげ、俺は東京とは結構遠いのか、母上に尋ねる。
すると、母上は俺の手元を覗き込むように手紙に目を通すと、安心したように口元に笑みを浮かべた。
「ふっ、あの子らしいわね」
「…?」
母上は珍しくそう呟いて微笑むと、俺に噛み砕いて手紙の内容を伝えてくれる。
12歳になってすぐ、東京の学生寮のある女学校に入れられてしまったこと。
3年はこちらに帰れそうにないこと。
手紙を送るのも難しい環境にあるため、あまり連絡を取ることは出来ないということ。
これらの内容をまとめると、どうやらお転婆がすぎて、Aは監獄のようなお嬢様学校に閉じ込められてしまったらしかった。
◇
「父上」
「?どうした杏寿郎」
小芭内が母上と読み書きの勉強をしている最中、俺は珍しく非番の父と、日中から稽古する。
「胸が痛いです」
「どっどこら辺だ!!」
母上のこともあってか、焦ったように木刀を投げ捨てて近づいてくる父は、俺の胸に耳を当てて心音を聞いている。
Aと一緒に過ごしてきて、だいたい4年程経っただろうか。
さっきの手紙で、後3年も会えないのだと知ってからというものの、俺の胸からは、なんだかギシギシと音がする。
「Aの声が聞きたいです」
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時