薬 ページ12
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「君一人くらいなら、それ程力もいらん」
同年代の女子と比べても細身なAは、触れれば折れてしまいそうな程、体重も軽い。
反射が良いのは鍛錬をしているからだし、熱が出ているからと言って、もう半日以上も寝ていたのだ。
そう話す俺に向かって、Aは首を横に振る。
「前はこんなに力強くなかったよ」
そして何より、最近の俺の声は変だと首を傾げるAは、あっと閃いたように俺の着ている着物を指す。
「着物だってキツそうだし、成長期ってやつかな」
「…成長期」
そう話すAに、俺は以前、母上に教えてもらった事を思い出す。
年齢を重ねていくにつれて、男女の差は明らかになり、声の低さも、食べる量も、物を持てる重さも変わってくるらしく、俺はなんだか違和感を感じる。
そして、女子には月経と言うものが来ることも、母上は俺に話した。
「あっ!!」
俺がそんなことを考えていると、Aは俺の布団を指して大きな声を出す。
「杏寿郎、薬飲んでないじゃない!」
「…これから飲もうと思っていたんだ」
言い訳をする俺に対して、母上に言いつけてやろうと、何故か生き生きとした表情で笑うAを捕まえて、俺は小芭内に押付け布団の中に戻った。
◇
「杏寿郎。薬、飲む。」
「…むぅ」
夕飯を食べ終わると、また薬の時間がやってくる。
「ほら、良薬は苦いもんなんだから」
「昼の時は
絶対上手いから飲んでみろと言っていたじゃないか」
薬が苦いということは知っていたが、解熱剤だから美味しいよなんて適当なことを言うAに乗せられ、俺は昼に悶絶した。
「仕方ない、杏寿郎が飲まないというなら
このさつまいもは私が」
「誰も飲まないとは言ってない!」
そっと後ろからさつまいもを出してきたAは、布団の横にそれを置き直し、俺に向かってほらと湯呑みを差し出す。
「杏寿郎、口開けて?」
少し起き上がった俺に対して、ニコリと可愛らしく笑うAは、そっと口元まで薬を運んでくれる。
俺の喉が動く度、嬉しそうに笑うAを見ていれば、知らぬ間に無くなっており、俺は褒美のさつまいもを貰う。
「わっしょい!」
口にさつまいもを含んだ途端、俺が思わずそう叫べば、Aはギョッとして俺を見た。
「わっしょい!」
「わ、わっしょい?」
「わっしょい!」
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時