肆 ページ38
◇◇
Aへ
もう見つけた手紙と重複してしまうかもしれないが、この手紙を隠す前、君のご家族と少し話をした。
これを君の部屋に隠すのも、君の兄上達と相談したんだ。君の兄上達は、やはり賢い人で、君を困らせようと必死に難しい場所に隠そうとしていた。
俺にとって、この手紙だけはあまり君に見つけられたくないので丁度良い。
最初に、この手紙を、この場所に隠したことについて、謝らせてくれ。
自分でも狡いことをしたと思っている。
君がこの部屋に来る時、つまりこの部屋を整理する時は、必ず煉獄家から出ていくときだと考えた。
一旦帰ってきただけなら良いが、もし君が再婚について悩んでいるなら、この手紙をゆっくり読んで欲しい。
俺が死んでしまった後、君には俺の事など忘れて、素敵な人と出会って欲しいと思った。
しかし、君が今までに俺にみせてくれた顔を他の男に向けたり、君を独り占め出来るやつがいるのだと想像したりするだけで、腹がねじれそうな程怒りが湧いてしまう。
君には悪いが、今の俺では素直におめでとうと言えない。
だから、もし君が本当に運命の人だと思えるような人にあったら、俺の墓まで1度連れてきてはくれないだろうか。
そして、もしその人との子が出来たら、見せに来てくれないだろうか。
毎年来てくれとは言わないから、数年に1度でも俺のことを思い出して欲しい。
そして、君が幸せになった時、俺は心から祝福できるよう頑張ろうと思う。
だから君は、思う存分幸せになってくれ。
◇◇
「…幸せになってくれ、」
いかにも杏寿郎らしい手紙の内容に、私は思わず笑ってしまう。
あなたは、手紙でも私のことばかりなのね。
私も、もう21歳。
結婚するなら今がちょうど良いのだろうけど、あなた無しの幸せなんて、私は望んでいない。
「…」
杏寿郎のお墓に行く度に、私の胸は締め付けられる。
もしかしたら、ひょっこり顔を出すんじゃないかなんて、今でも小さな期待を込めて、私は何度も足を運ぶ。
4つ見つけるのに、約2年。
あなたに本当に会える日も、そう遠くないわね。
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時