奇病患い 【短編集】

インセクトシンドローム ページ25

インセクトシンドローム
＿＿＿

体に小さな蝶の羽や触覚が生えていき、およそ二年ほどで完璧な昆虫となってしまう病。


発病するのは『花や昆虫などの自然に強く関心を持ち、惹かれている人』に限る。

日の光を浴びないことによって進行を遅らせることができる。


時宮京華様ご考案だそうです
＿＿＿

花屋に並んだ花をうっとりと見つめている少女。
かれこれ30分ほど、どれを買うか迷っているようだ。
声を掛けようか、と1歩踏み出そうとしたその時、

「これとこれとこれを花束にしてください」

と、言った。
私は営業スマイルを浮かべ、
テキパキと包んでいった。
花束。プレゼントかな？
それならば飛びっきりいいものを。

数分後、私はその花束を、少女に渡した。
少女はぴったりの値段を払い、満足気に帰っていった。

「優香さん、今日はもういいですよ」

と、店長の佐々木さんが言ったので、
お言葉に甘え帰ることにした。

花屋の服装を脱ぐと、小さな羽のようなものが腕に生えていた。
それは色鮮やかで、昔見た蝶々を思い出す。
それは払っても取れなかった。
私は微かに不安を覚える。

手に蝶々の羽

と、帰りの電車で検索した。
すると1つだけ、私の調べたかったものが出てくる。

インセクトシンドローム

花や昆虫などに強く関心を持つものが発症。
発症してからおよそ2年後に昆虫となる。

あまりの驚きに、私はスマートフォンを取り落とした。
それは私の太ももに跳ね返ることなく落ちてゆく。
その時間は永遠にも感じられた。

インセクトシンドローム→←白雪の華病

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す