【実況者】TRANS-PORTER【wrwrd!】 (ページ42)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:61,381 hit

＊ページ42

｢…っん…｣

微かな振動音。うっすらと目を開けると、ぼんやりと見えた景色。いつもとは見慣れないアングル。目の前に運転席がある。乗っ取られている、そう思い起き上がろうとするも、手首と足首の自由が聞かなかった。おかしい、これは私の車なのに。

｢あ、起きた？｣

｢な、にしてんだ！！外せ！！｣

｢君、ちゃんと食べてる？軽すぎない？｣

｢話を聞いっぐ！！？｣

｢うるさい、撃っちゃうよ｣

彼は運転席からこちらに身を乗り出し、どこから出したのか、ガムテープを口に貼られてしまった。…いや待て、どうしてこれを…？手首と足首は跡がつかないようにタオルで縛られてる。

｢…オートドライブモード、便利だねぇ。｣

｢！！｣

｢なんだっけ…？パスワードが…4628？ふふ、なんて顔してるの？｣

｢…！？…！！？｣

｢大丈夫だって、取って食ったりしないよ。襲うつもりもないよ。これからずっと、ね。…ふふ、かわいい…怖いでしょ？｣

｢…っ！！｣

｢自分の車で拘束されるなんて思ってた？ま、君を送り届けてるだけだし…｣

ーーーどうしてそんなに愛おしそうな目で見つめる？
頬をさすられる指から懐かしい匂いがした。ガムテープの上から唇をなぞられる。こそばゆくて何も考えられない。

この男はどこまで知っている？

｢…｣

｢…あぁ、格下？あれは部下に任せてるよ。あの時投げてあげたでしょ？あの煙、"一定時間の記憶が無くなる"やつなんだ。｣

｢ーーー！！？｣

｢だからまぁ…1時間前の事は既に忘れている。君が狙撃されるギリギリ前まで…ね。
あぁそう、外回りしていた時に襲われて気を失って倒れてた、って言うんだよ？そうやってアリバイ作ってあるから。会社にあった窓も弾の跡もね。｣

｢…？｣

｢助けた？違うね、まだ手放すのが惜しいんだよ。…っと、着いた。｣

いつの間にか会社の駐車場。彼は後部座席に乗り込んできて、私の口に貼られていたガムテープをゆっくり、優しく剥がした。人形を扱う様に。

｢…っは…なんで、それをっ…！！｣

｢言ったのよね？僕さ、君を手に入れるまで手放さないから。ダークホースという檻に、無理矢理でも閉じ込めるまで…ね？｣

｢…っだから！！誰にもつかない！！｣

｢…っふふ、そんな強気な事、いつまで言えるかなぁ？｣

｢何がっーー！？｣

目いっぱいに広がる赤。短髪の赤髪が、瞳が、目の前を侵食していく。

そのまま、眠るように私を優しく後部座席に寝かせた。どこへ行く、まだ、私はーーー。

｢いずれこちらに来ることになるさーーー"愛しい8(エイト)"。｣