【実況者】TRANS-PORTER【wrwrd!】 (ページ11)

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｢ここ、いいかな？｣

食堂にて。不意に声を掛けられ、啜っていた麺を口にくわえたまま後ろを振り返る。眼鏡をかけて、優しそうに笑う男の人。あのフロアの人間とは分かったが害はなさそうな人だったので頷く。

｢…美味しそうにラーメン食べるね。｣

｢何せ初めて食べましたので。｣

｢そうなの？日本初めて？｣

｢初めて…ではないですけれど、でもその時は仕事だったので…ところでお名前…｣

｢あっ、わっすれてた～俺、ヒラ！｣

｢…ニックネームですか？｣

｢そうそう。ごめんねさっきは。よろしく。｣

そう言ってた手を差し伸べられた。まぁあんな攻撃的なこと言われてなかったからいい人なのだろう。それかただの女好きか。

彼はオムライスだった。食べるものは逆じゃないか、そう思ったが、食べたいものを食べて何が悪い。

｢あれ、すっごいかっこよかった～｣

｢…あぁ、ヨレヨレスモーカーさんの事ですか？｣

｢なんて呼び方…昔なんかしてた？｣

｢…柔道、かっこいいですよね。｣

｢柔道か～かっこいいよね！｣

そっか～、柔道経験者か～と水を飲む。彼はあざとさが凄い。何故だろう、全ての仕草が可愛く見える。柔道ケイケンシャ。うむ、あながち間違いではない。

しかし、ラーメンは脂っこい。ここで普通はあっさりしたものを食べるのが主流なのだが、私的には食事の後味は甘っこさが残っててほしいのだ。

｢…シノダちゃん。｣

｢！どうしましたか、ヒラさん。｣

｢ヒラでいいよ～その代わり俺もAちゃん、って呼ばせて？｣

｢…私はちゃん付けはきらいです。｣

｢そっか、ならAでいいの？｣

｢はい。ご自由に。｣

｢おっけ～わかった！でさ、この後ーー、｣

ヒラさんが口を開けた時、私が机の上に置いていた携帯が振動した。もうしわけない、と彼を見ると、｢でていいよ～｣と電話を促してくれた。席を立って、背を見せるように電話に出た。仕事用だ。

｢…忙しい。｣

『昨日のお礼、欲しくないの？』

｢…！すぐ行く、あそこでいいのか？｣

『凄く嬉しそうだね、待ってる。』

気分がいい！！先程の罵倒の気分が嘘のようだ！！昨日のダークネスかなんだか知らないが凄いぞ！！まるでジェットコースターだ！！

…しかし、ここで悟られてはいけない。真後ろにはヒラさん…ヒラがいる。

｢…すみません、諸用が入ったのでその話、後で聞いても？｣

｢あっ、そうなの？わかった。…あっそうだ。｣

そして彼は最後の一口を飲み込むと、笑顔でこう言った。

ーーー"車、見ていい？"