紅一点は事務所1の騎士様！？(3) (ページ5)

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「...大丈夫、だよね？」

数日前にメールで送られてきた店はどう考えても私服でなんか行けっこなくて、慌てて買ったドレスとアクセサリーを身に付ける。

「健くんにもらったアクセサリーを使う日がこんなに早くくるとは」

鏡でみた自分の姿に思わず苦笑いをしていれば、スマホが鳴っていて。珍しいと思いながら画面をみれば、それはさっきまで話していた滝沢くんだった。

「もしもし、何かありましたか？」
［まだ家出てないだろ？］

下で待ってるから、そういって切れた電話に呆れてしまう。

「...タクシー代浮くからいっか、」

数か月前に会ったときはあんなに震えが止まらなかったのに。
なぜか落ち着いている自分に驚きながら、玄関を開けた。

［じゃあ、何かあったら連絡して］
「...あの、」

ありがとうございます、と伝えればケラケラと笑われてしまい早く行けと車から追い出されてしまう。
お父さんに背中押されてるみたい、なんて言ったら何て言うかな。そう思いながら顔をみればなんだよ、と眉間にシワを寄せている。

「行ってくるね、お父さん」
［...こんな可愛げない娘育てた覚えはないけどな］

そういいながら嬉しそうにいう滝沢くんに思わず爆笑していれば、呆れた車はそのまま走り去っていった。

「...よし、いくか」

頬を叩いて気合いを入れ、お店に入る。
案内された個室の扉を開ければ既に先客がいて。

「...久しぶり、」
［...ええ、無事に着いてよかった］

席まで案内してくれた店員さんにお礼を言って2人きりになれば、ガタンと大きな音がして。

［...本当に、申し訳ないことをしたと思ってる］
「別に、怒ってないよ」

おじいちゃんに大切に育ててもらったから。
そう笑えば目の前の人が少しだけ傷ついたような顔をする。

「...今日来たのは、今後のために清算しておきたかったから」

1週間、自分がどうするかずっと考え続けた。
これからの"私たち"にとって何が一番最善なのか。

「私は、これを機に関係を修復しようなんて思ってない。
...これまでもこれからも、私たちはずっと他人だから」
［A、］

何か言おうとした目の前の人は運ばれてきた食事のノックで遮られてしまう。

「...いただきます」

大事な用件は伝えられた。
この先あと何回食べられるかわからない豪華な食事を楽しむことに専念した。