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少ししてやって来たタクシーに音ちゃんを連れて森本くんが乗り込む。
音ちゃんの事よろしくお願いします、って頭を下げたら、責任持って送り届けます!って敬礼。お茶目な人なんだな、森本くん。
タクシーを見送って、徐々に散り散りになっていく集まり。私も帰ろうって思って、隣に居た松村くんに声を掛けようとしたら、それより先に松村くんが声を掛けてきた。
「 歩いて帰る? 」
「 うん、家からそんなに遠くないから 」
「 じゃあ、送る 」
「 え、!それはいいよ、流石に申し訳ないし… 」
「 こんな夜遅くに女子一人で帰らせる訳に行かないでしょ 」
「 でも、 」
「 いいから 」
ほら、早く行くよ、って歩き出す松村くん。意外と強引な所もあるんだな、なんて背中を見ながら考えて、その姿が不意に、高校の時の大我くんに重なった。
そうだ、会った時はいつも家の直ぐ側まで送ってくれてたな。
一度だけ、遠回りになるから最後まで送ってくれなくて大丈夫だよってそう伝えたら。
『 …彼女一人で帰らせるヤツ、居ないでしょ 』
ぶっきらぼうな言い方だったけど、あぁ、大事にされてるなぁ、なんて思ったっけ。
「 大我も二次会行くぞ! 」
振り返れば目に映るのは、男の先輩に肩を組まれて遠ざかっていく、金色。大我くんの背中。
あぁ、二次会行くんだ。……今日は、送ってくれないんだな。
幸せだった頃を思い出した所為か、不意に鼻の奥がツンとして、慌てて前を向けば、立ち止まってこちらを振り向いていた松村くんと目が合う。
「 …相田さん 」
「 、うん 」
「 帰りながら、話聞かせて 」
ゆっくり頷いて、隣に並んで歩き出す。
大我くんと一ヶ月以上会話してない事、大学に入ってから今日まで会っていなかった事、連絡が彼からは来ない事、彼の気持ちが全く見えない事。自然消滅するかもしれない、そんな話をぽつり、ぽつり、零しながら。
私が話す間、ただ頷くだけで何も喋らなかった松村くん。今は、そんな彼の優しさすら、痛かった。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です!読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています! (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…! (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳰 | 作成日時:2023年12月17日 15時