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煤かぶりのダ・ヴィンチ ページ1

「旦那。そら一等モンの革靴だろう?そんなに煤で汚して。靴が泣いてやがることだ」

ぬっとした長身の、長髪を無造作に結った男。彼の召した品の良い革靴に煤が張り付いているのを目ざとく見つけたのは、靴磨き屋のアーサーだった。

アーサーは、ぴょこぴょこ赤毛を跳ねさせながら、ツンとした青い瞳を瞬かせて、人の間を縫って男を捕まえ、自らの店前に腰掛けさせた。

「アンタ、名前は?」
「…モルガン。」
「いい名じゃねーか。由来はなんだ?」
「……」
「酷ぇや」

ぼんやりとした仏頂面で、顔や衣服のところどころを汚した成人男性は、終始不機嫌そうだった。
にべもなく会話を圧し切ったモルガンを、アーサーはからっと笑いとばす。

「これは…ジョーンズ?最新型だな。いい趣味をしてる」

モルガンの靴を磨きながら、アーサーはほうと声を上げた。モルガンの煤だらけの靴は、アーサーの見定め通り、由緒ある銘店のものだ。となると質もよく、値もそれなりにするだろう。アーサーには買えぬ、一級品だ。

椅子にぼーっと腰掛けスラリと長い足を台にのせたモルガンは、鼻歌ながらにブラッシングしはじめたアーサーを一瞥すると、フンとそっぽを向く。

「……作業に支障がなければなんでも…」
「作業?旦那、なんの仕事を?」
「…エンジニアだ」
「へえ、ダ・ヴィンチみたいなもんか」
「………皮肉か」
「俺なりの褒めだってっ」

アーサーは豚毛のブラシで一通り払い終えると、レザーローションを取り出した。
アーサーはいつも愉快に笑っているが、靴磨きをするときばかりは真剣そのものだ。
クロスに染み込ませ、いざ革靴をひと撫ぜする。それだけで白いクロスが黒く滲み、アーサーはぎょっとした。拭った面からは、二段階ほど明るくなった地の皮色があらわになる。無言でローションを注ぎ足した。

「早くしてくれるかい……溶接の途中なんだ」
「あいよ!やりがいがある靴なこった」

モルガンは、無駄な馴れ合いは好まぬタイプなのか、露骨に苛立ちを見せている。アーサーはそんな様子も気に留めず、笑うと、興味の湧くままに話を振り続けた。

「革靴に煤の層が張り付いていやがる。いい靴と言えど、これじゃあ値打ちも下っちまう」
「……」
「…そんなにシワを寄せるもんじゃねえよ。いい面してんだから。レディも寄り難いぜ」
「…機械があれば、いいさ……」

煤かぶりのダ・ヴィンチ2→



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作者名:づみ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年1月8日 15時

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