ずっと、君と共に。[橙]

19話 ページ20

-目黒side-





康二の耳が聞こえてない？



はぁ？


何言ってんの、この人。




俺らジャニーズのアイドルだよ？



歌って踊るのが仕事だし、康二だって今までもこれからもずっとSnowManとして生きていくんだよ？




なのに、悪い冗談はよしてくれよ。マジで。





目｢ｯ…嘘つくなっ…康二は聞こえてるｯ…！｣



阿｢目黒ｯ！｣





思わず立ち上がって、目の前の偉そうな医者の胸倉を掴む。



怒りに任せた力は強くて、アイロンでピンと伸ばされてた白衣に、簡単にシワを作った。




けど、すぐに阿部ちゃんに制されて手を離させられたと思ったら、俺を元いた椅子に座らせて頭を下げるから…


何だか自分が幼稚に感じて、情けなくなったよ。




その代わり、そんな医者の言葉なんて信じたくないのに、そいつに話の続きを促す阿部ちゃんの姿は、俺よりも遥かに大人に見えた。





医｢高熱が原因かは定かではありません。ですが、昨日普通に聞こえていた方が突然聞こえなくなるというのも、あまり珍しい事ではないので…｣



阿｢あの、それは…治るんですか…？｣



医｢今はまだ、何とも…｣



目｢ｯ…｣





あまりに曖昧な医者の説明に、また爆発しそうになる苛立ちを堪えて拳を握る。



ふと、未だベッドに横たわって荒い呼吸で眠る康二の方を見ると、また魘されてんのか小さな唸り声と一緒に目から涙が一筋零れて…


何故かこっちまで泣きそうになった。



辛いのは、苦しいのは、俺じゃなくて康二なのに。




そして、あの家でのパニック状態の理由も今なら分かって、自分の無力さを痛感しながら、その涙を引き伸ばした服の袖で消した。




康二が怖かったのは、きっと静寂だ。



急に耳が聞こえなくなって、怖くない訳がないよ。




ごめん。



ごめん康二。




心の中でそう謝り続け、何も出来ない自分自身を酷く恨んだ。

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