夢桜４* (ページ50)

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「なんて言っても、Aちゃんは和さん達と一緒にいることを選ぶでしょ」

「はい」

「俺の方がAちゃんのこと幸せにするよ。

人斬りの嫁より俺の方が・・・」

「そんなの・・・」

樹先輩があたしにキスをする。

そのまま、ソファに押し倒される。

「せんぱっ・・・」

「俺にしなよ。絶対こっちの世界で幸せにするから」

あたしは目を逸らさず、樹先輩を見る。

「ごめんなさい。あたしは何があっても和さんの隣で生きていくと

決めました。あたしの幸せは和さんの隣にいられることです。

それ以上の幸せはありません。失礼します」

あたしは先輩を突き返して、部屋を出る。

今、和さんの部屋に行くことはできないから、翔さん達の部屋にお邪魔させてもらおう。

落ち着いたら和さんにちゃんと謝ろう・・・。

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～樹side～

“あたしの幸せは和さんの隣にいられること”

Aちゃんの言葉が頭の中でこだまする。和さんより早く出逢って

いたのに、和さんには敵わなかったか・・・。

早くあっちの世界に戻してあげよう。このまま現世に残ってもらっても

俺が辛いだけだ・・・。俺は研究室に戻って、ひたすら研究に打ち込んだ。

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～和side～

気晴らしに建物内を散歩する。

扉がうっすらと開いていた。

そのまま通り過ぎようとしたが、なぜか気になった。

「俺の方がAちゃんのこと幸せにするよ。人斬りの嫁より

俺の方が・・・」

「そんなの・・・」

この会話の後、褥に押し倒される音がする。

この部屋にいるのは、間違いなく樹君とAだろう。

甘い口づけの音。吐息。

「せんぱっ・・・」

息絶え耐えのAの甘い声。

俺は居ても立ってもいられず部屋に戻った。

俺だけが知っているはずの顔を樹君にも見せていた。

俺だけが知っているAは？

俺は一体Aの何を・・・。

自問自答しているうちに俺は大粒の涙が頬に零れ落ちていた。

俺はこんなにAのことを愛しているのに・・・。

どうして・・・。

俺はただただ壁を殴って気持ちを落ち着かせるしかなかった。