3...依頼主�� ページ4
私がソファーに座ると緊張した様子で依頼主が姿勢を正した。
そこでふと思った。
あれ、そういえばこの人どういう用件なんだろう…勝手に私への依頼と決めつけていたけど、もしかしたらただ森の中で迷っただけかもしれない。
だとすれば待たせる必要も着替える必要もなかったのに。先に確認しておくべきだった…。
そんなことを考えていると
「あの」
と少し低い声が聞こえた。
依頼主の声か。
「この館に死んだ子を生き返らせる少女がいると聞いたのですが、本当ですか」
依頼だった。私のもしかしたら…という淡い希望は見事に打ち砕かれたが依頼というなら話を聞いて引き受けるか決めなければならない。
「正確には少し違います。生き返らせるのではなく、死んだ人をそっくりそのままコピーしたかのような人形を用意し、そこに死んだ人の魂を込め、まるで生き返ったかのように見せるだけです。と言っても普通に生活出来ますし、記憶もある程度は引き継がれます」
淡々と説明していくうちにだんだん女性の顔が明るくなる。
「まぁ、素敵！本当に生き返るように見えるなんて…それに生活も今まで通り！素晴らしいわ！！」
そこで女性はハッとした様子で私の顔を見た。
「そういえば、貴女お名前はなんて言うの？私はキャサリン、キャシーと呼んでくださってもいいわよ」
あー、そういえば自己紹介、するの忘れてたな。キャサリンさんの視線に促され渋々口を開く。
「私はあやめです。呼び方はお好きにどうぞ」
「あやめちゃんね、覚えたわ」
で、まぁ名前なんてのはどうでも良くて。問題は依頼してくれるのかしてくれないのか。
「人形による生き返らせ、どうなさいますか？代償さえくださればすぐにでも実行いたしますよ」
さぁ、どうだ。
「質問しても、いいかしら？」
そうきたか。大方代償やら人形の用意の仕方だろうな。
そしてその予感は当たった。
「人形ってどうやって用意すればいいのかしら？？私、あの子のような大きな人形、とてもじゃないけど作れないわよ」
「それでしたら、私が用意するのでご心配なく。」
「それとね、代償って何かしら？お金？お金ならローンとか組めるのかしら？」
「代償は、そうですね」
代償、それは、
「人形を動かしたい分の寿命です」
「は…？」
キャサリンさんが呆気にとられた顔をして固まった。
まあ当然のことだろう。
そもそも人の魂を抜き取り人形に込めるのだ。
世の理に反する、その代償は、安くない。
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作者名：らむね | 作成日時：2021年4月11日 16時
