ep.13 あなたの名前は？ ページ13
Aside
初めて人間の"服"というものを着せてもらった。
暖かい水に髪を解かす毛のような物、見るもの全てが初めてだった。
みんなの集まる所へまた連れていってもらえば、先程以上の視線が集まりどこを見ていいのかわからなくなる。
自分は人間に見えているのだろうか、と不安も過ぎる。
そんな時、一瞬、彼と目が合った。
ドキッと、心臓が飛び出そうになる。
その後ハンジさんに何か言われてコップを落としそうになったお陰で視線は外れたが、あのまま見つめ合っていたら彼の瞳に吸い込まれてしまうんじゃないかと思った。
その後名前を聞かれて、確かに私の名前をどう伝えればいいのか考える。
「字は書ける？」
じ…とは何だろうか……
ペラペラのどこかで見た事あるような物と、長細く手のひらに収まる棒を渡されたが、使い方がわからない。
ペラペラの物は布に似ていた。何かを巻くのか？
棒は……
『っ！！！？』
手のひらに棒の先を当てれば、当たった部分が黒く染まる。驚きから咄嗟に棒を投げ飛ばしてしまった。
「うおっと！！どうした？！」
「もしかしたら紙もペンも、わからないのかも…字も難しいかな？」
優しく金髪の男の子が聞いてくれたので、私は素直に一回頷いた。
でも、どうしても名前を伝えたい…
彼に私の名前を知ってほしい。
『(A！A！)』
私は声が出なくても、何度も自分の名前を大きな口を開けて伝えた。
何度も咽せかえりそうになるが、それでも皆が必死に言葉を理解しようとしてくれるので、諦めずに続ける。
「……わかった！A…Aだね！！」
金髪の男の子は口パクと、それに近い名前を予測して私の名前を見事に当てた。
私は嬉しくて何度も頷く。
「さっすがアルミン！！お前本当に頭がいいな！」
「そんな事ないよ…Aさんがあきらめずに伝えてくれたからだ…よろしくね、僕はアルミン・アルベルトだ！」
差し出された手を握り返す。
これは海の中では親睦の証。
きっと、海の中も陸の上も、これは変わらないのだろう。
違いばかりでは無く、同じ部分もあるとわかると、なんだかうれしかった。
それから皆の名前を紹介される。
覚えたとしても呼ぶ事は出来ないが、それでも友達になれた様で心が暖かくなる。
それに…
「リヴァイだ」
____リヴァイ、さん……
心の中で何度も彼の名を呼んだ。
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作者名：yoku | 作成日時：2023年6月5日 10時
