ep.11 人間とは暖かい ページ11
Aside
波の音が聴こえる。
カルデラに薬をもらって、それから……
パチッ
目を覚ますと目の前には、会いたいと願った彼がいた。
「あ…」
突然の出来事に慌てて距離を取ろうとするが、うまく動けない。
(そうか、私…人間になったんだ…)
倒れる、そう思ったがギリギリで彼が受け止めてくれた。
こうして、運良く彼と出会うことができたのに、声は出ないし、歩くこともできず、どうしたらいいのか途方にくれる。
「しかたねぇ…ジッとしてろよ」
そう言った彼は、私を抱き上げる。
私の体には見たことも無い緑色の布が巻かれており、おそらくこれは彼の物だろうと推測できた。
だって…
胸元から漂う彼の匂いと、布から漂う匂いが同じだったからだ。
(人間っていい匂い…それに、暖かい…)
それと…
初めて見る砂浜からの海の景色、段々と近づいてくる建物や人の声、全てが新鮮で心躍った。
・・・
「ど、ど、ど、どうしたんだいリヴァイ！！そのえらい美人の女の子〜〜！！」
彼に連れて来られた場所には、たくさんの人間がいた。
「おいクソメガネ。その涎と血走った目をやめろ。怯えてるじゃねぇか」
彼をリヴァイと呼ぶ女性は、クソメガネと呼ばれていた。
私を見て興奮する彼女に多少の恐怖を覚える。
「ご、ごめんよー怖がらせるつもりは無かったんだ…え、この子服は？…まさか……」
ふく、とは何だろうか。
話しかけてくれるが何一つ答えられない事に悲しみが込み上げる。
最後に"こっちにおいで"とメガネさんに言われたので彼を見ると、大丈夫だと言うように頷いてくれたので、そっと地面に降りメガネさんの方へ向かう。
(歩くって、どうするんだろう)
考えてもうまくできずに、また倒れてしまう。
歩けない事を知ると、メガネのお姉さんはきつく私を抱きしめる。
「そりゃ大変だ……そして、柔らかい」
『〜〜〜ッ！！』
初めての出来事に顔が熱くなる。
(わぁ…この人も、いい匂い)
そんなことを考えていると、ひょいとメガネさんに持ち上げられてまた別の場所に連れて行かれた。その後ろを二人の女の子がついてくる。
「サシャ、服を適当に見繕ってきてくれないか？ミカサは湯を沸かしてくれる？」
「「はい！」」
私はそっと木箱の上に座らせられた。
「何があったか知らないが…君には大変な事があったのかも知れないね。もう大丈夫、私達を信じて」
暖かい彼女の手は、私の髪を一撫でする。
____人間とは、なんて暖かいのだろうか…
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作者名：yoku | 作成日時：2023年6月5日 10時
