ep.1 海の上の世界 ページ1
_____初めて彼を見たのは
夕陽に照らされたあの美しい海岸だった。
・・・
海岸にある大きな岩に腰を下ろしたAは、ヒレを一度動かした。
小さな波を作り、ピチャンッと可愛い音を鳴らす。
『最近は船が来ないのね…』
以前は頻大きな船が頻繁にこの海岸に停まっていたが、近頃は見なくなった。
何をしているのかわからないし、遠くて声もまともに聞こえない。
それでも、"人間"を見る事ができるのがとても楽しみだった。
誰もいない海岸を見つめる。
そう、誰もいない筈の海岸を……
『っ！！？』
奥から人影が一つ現れた。
慌ててAは海に飛び込む。
幸い相手には気づかれなかったようで、その人影は止まる事なく波打ち際まで歩みを進めた。
Aはその姿を黙って見つめていた。
人間は、Aには無い足から靴を剥がし、ズボンの裾を捲りゆっくりと海に足をつけた。
波が優しく足を濡らしていくのを、ゆっくりと堪能しているように見えた。
Aはその人間を一目見たくて、海に潜りできる限り近づいた。適当な岩場に身を隠し、そっと覗き見る。
_____なんて、美しいの
赤い夕陽に照らされた黒い髪。
目を閉じて空を仰ぐ彼の横顔。
凛とした佇まい…
優しい小々波の音……
それらが全て初めてみる宝石のように輝いて見えた。
ピチャッ…
_____しまった！
つい見惚れて音を立ててしまった。
「っ！誰だ！？」
もちろんこの音は男にも聞こえており、海を見て警戒される。
Aは海の底深くに潜り、姿を現す事はなかった。
・・・
「あ、いたいた！リヴァイ、何してたんだ？」
海岸にはもう一人の人間が現れる。
「ハンジか。いや……別に」
「ムフッ！何なに〜黄昏ちゃってんの？」
「バカか。それより何か見なかったか？」
「どこで？」
「……海だ」
リヴァイは真顔で海を指差した。
「……リヴァイ、港の建設できっと疲れてるんだね。ごめんよ人類最強にこんな事させて！」
「もういい。帰るぞ」
リヴァイは確かに何かを見た。
海の中に入っていく、"何か"を。
だが時間が経つにつれ確証が薄れていく。
_____確かに、事務仕事ばかりで疲れてるのかもな。
魚が跳ねたんだろう、と思いそれ以降深く考えることは無かった。
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作者名：yoku | 作成日時：2023年6月5日 10時
