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「ん、、なんだこれ写真立て、、?」
コントローラーを探していたはずの天月くんの手にはなぜか写真立てが握られていた。
「それはだめ!!見ないで!!」
慌てて天月くんから写真立てを奪い取ったがたぶん見られたよね、、
別に見られて本当にだめな訳じゃない
でも今のボーイッシュな雰囲気とはかけ離れた正反対の私の姿に疑問は抱くだろう
「ごめん、、見ちゃった、、でもなんで見ちゃだめなの?」
予想外の質問に少し戸惑った
”なんで髪切ったの?””なんでそんな男の子みたいな格好するの?”
きっとそんな質問が来るに決まってると思っていたのに、、、
「だって今と雰囲気違いすぎるし、、それに、、」
「えーーなんでよ!髪長いのも似合うなって思ったよ!ってか今も昔もAちゃんはAちゃんでしょう?」
なんて言葉にしたらいいのかわからなくて言葉につまる私に天月くんは笑顔で答えてくれた
”今も昔もAちゃんはAちゃんでしょう?”
当たり前のことのはずなのにその言葉が嬉しくて仕方がなかった。
私はただ髪を切って男の子みたいな格好を好きでしてたわけじゃないから
・・・・・
昔から男の子と遊ぶのが好きだった
おままごとよりもゲームや虫取りをするのが好きだった
そんな私を受け入れてくれていた友達が一人、二人と歳を重ねるごとに離れていった
異性を意識し始める歳になると私は”男好き”だなんて言われるようになった
それでも自分らしく生きる私を受け入れてくれる幼なじみがいた
高校生になっても異性であっても”友人”として接してくれる唯一の存在だった
そんな彼がいてくれるだけで自分が女であることを許すことができた
”男女の友情”があると信じていた
でも周りからの目は変わることはなく否定され続ける毎日に私は生きづらくなっていった
髪の長い自分を。スカートをはく自分を。
全てを否定されているような気がして私は男の子みたいな格好をするようになった
周りに気をつかい無理に笑って明るいボーイッシュな女の子を演じた
”自分らしさ”とは何かわからなくなった頃に自分を犠牲にして生きやすい毎日を手に入れた
そんな私を彼は受け入れてはくれなかった。
短くなった私の髪を見るたび彼は悲しい顔をして私から距離をとるようになっていった
「Aはそれでいいの?」
最後に彼は私にそう言い残していなくなってしまった
彼と連絡をとらなくなって数年後
”亡くなった”
交通事故だったらしい
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作者名:瑠衣 | 作成日時:2021年6月18日 16時