安倍晴明 ページ43
「ど…どういうことや！！くわしくきかせぇ！！」
妖怪達の困惑した空気を破ったのは、式神に乗って現れたゆらの声。
「奴良くん今の話」
リクオに詰め寄ろうとしたゆらの声を遮ったのは、ゆらの後ろで何やら考え込んでいる様子だった十三代目。
彼は、驚く様子もさほど見せずどこか納得したような顔と態度で。
「安倍晴明の母親が"狐"って伝承を聞いたことない…？」
「そうなん！？」
驚いて目を丸くするゆら。
狐、それはまるで羽衣狐を指しているかのような。
嫌な一致。
「そう、平安時代の伝説的陰陽師安倍晴明は、人の世を表からあやつり百鬼夜行をあやつり使うた男や」
ドクンッと心臓が嫌な音を立てる。
千年程前ー信太の森にすむ妖狐が葛の葉という女に化け、安倍保名という武士と恋におち結ばれた。
そして生まれたのが安倍晴明。
安倍晴明は、平安の世で「卜筮・暦・天門・漏刻」を司る機関陰陽寮の天文博士をつとめ、その呪術的な能力は群を抜き"天才"と呼ばれて当時の貴族から篤く信望されていた。
しかし彼は一方で"外法"と呼ばれた。
禁断の術にも深く通じ呪詛によって人を呪い殺したり、妖など悪鬼を支配する術をも操ったとされている。
その時、弐條城にて産気づいた羽衣狐を眺めていたぬらりひょんは窮地に陥っていた。
羽衣狐は鵺を宥めるように自身の腹部を優しく撫でる。
「今このおじじを殺すでな、そのあと…食事しような」
そして、その冷たい眼差しをぬらりひょんへと向ける。
ぬらりひょんは畏を使って柱の影に身を隠しながら、異様で邪悪な"畏"の気配を感じて確信する。
こいつを産ませてはいけないと。
ここで今自分が羽衣狐を討つべきではないかと。
そのため、背後に立つ男の気配に気づくことができなかった。
刀を抜こうとしたぬらりひょんは、いつの間にか背後にいた茨木童子によって背中を斬りつけられた。
そのまま柱に叩きつけられる。
「しんじらんねぇ、またクソ虫がでやがった」
羽衣狐も尾をユラユラと動かしながらぬらりひょんの方を見つめている。
「ち…あの畏に気をとられて気付かんかったわい」
険しい顔で息をつくぬらりひょんに、狂骨の髑髏から放たれた蛇が襲いかかってくる。
刀を出して斬り裂くも、蛇は容赦なくぬらりひょんの体に噛み付いた。
「にがさない」
足元に広がる髑髏からは無数の蛇達。
そんな狂骨を睨みつけるも、背後には鬼童丸の姿が。
いつの間にか、周囲を京妖怪達に囲まれていたのだった。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
