再び共に ページ42
相克寺では、離れて行動していた首無達奴良組の妖怪が土蜘蛛を討ったリクオ達の元に合流していた。
「おー、おめぇら。遅かったじゃねぇか」
駆け寄って来る首無達に気づいて笑顔を見せるリクオに、彼らは真っ二つになった土蜘蛛を見上げて戸惑いの声を上げる。
「リクオ様が…倒されたのですか…？」
何も答えずにじっと見つめてくるその視線に浮いた首をのまま頭を下げる。
「申し訳ございません。側近として力になれず、あわせる顔がございま…」
責任感の強い首無のことだ。
自分が茨木童子や京妖怪を前にして暴れていたことを悔いているのだろう。
しかし、首無の言葉は目の前にバッと出されたリクオの手によって止まる。
驚いて目を開けると、想像よりも強い眼差しに思わず息を呑む。
「オレの力が足りなかったばかりに、お前達には苦労をかけたな」
その視線の鋭さは口を挟む隙を与えてくれない。
「首無、河童、黒田坊、毛倡妓、これからも…よろしく頼む」
「……リクオ様…」
晴れやかな笑顔を見せる奴良組の妖怪達。
そんな様子を見守る鴆もまた嬉しそうに笑っている。
そして、それは少し離れたところに立っている彼女に向けても。
「つらら、お前もだぜ」
「は…はい」
リクオの不敵な笑みにドキッとして顔を赤らめる雪女だったが、ハッとしたようにもじもじと目を逸らす。
勘違いから生じたものではあるが、乙女心とはなかなか複雑で厄介なものらしい。
「あ、いえ……知りません！」
不思議な顔をする首無や黒田坊をよそに、事情を知る淡島や雨造は「リクオも罪な男だな」と雪女に同情するような視線を向ける。
ガラガラガラと激しい音を立てながら起き上がって座り込むのは、先程リクオがイタクを鬼纏ったはずの土蜘蛛だった。
「…ひざをつかされたのは"鵺"と闘って以来千年ぶりだぁ」
小妖怪達はまだ倒せていないのかと驚き動揺する。
しかし、リクオだけはそっとその目を細める。
「"鵺"…その妖が京の奴らの言ってる"宿願"ってやつか」
土蜘蛛は鼻を触りながら肯定する。
「そうだ。ワシァその"鵺"とまた闘りたくて闘りたくてしょーがねぇのよ…ただ"鵺"ってのは得体の知れねぇもののふたつ名でな…ヤツは人としてはこう呼ばれた…」
切れたもう半分の顔を手に言葉は続く。
「千年前の京の闇を支配した男、安倍晴明」
「安倍晴明…だと？」
大昔に死んだはずの人間の名、それも陰陽師のそれが聞こえてその場は困惑と動揺で埋め尽くされる。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
