増援 ページ36
張り手のように次から次に自分へと向かってくる土蜘蛛の手。
何が起こっているのかと近くに寄った鴆と雪女の目に映ったのは、土蜘蛛の手の形に飛び出して形を変える糸。
その勢いは凄まじい。
土蜘蛛は昔から天災に喩えられた。
地震、台風、疫病、ただ過ぎ去るのを待つしかない。
出逢ったら終わり。
「ーまぁた壊れてねぇのか」
そこには、血を流しながらも倒れずにこちらを睨みつけるリクオの姿。
「おめぇ本当に面白ぇ奴だな…」
鋭く細められるその瞳。
「だが…オレの畏に呑まれてお前の百鬼夜行は散り散りになっちまった。お前はもう一人ぼっちだ…」
その背中にあるのは、鴆と雪女。
共に闘った二人の証。
「リクオ様！」
氷の剣を手にリクオの背後に降り立った雪女と、鴆。
驚く土蜘蛛を二人とも真っ直ぐに見据える。
「言っただろ土蜘蛛。主を壊さねぇと"百鬼夜行"は壊さねぇ！！」
リクオも立ち上がり同じように睨み返す。
「…オレの百鬼でお前を討つ」
「…はっ、たった三人で…百鬼夜行ヅラかいっ…」
ニィッと笑う土蜘蛛の声。
しかし、それを否定したのは上からの声。
「いいや六人だ」
驚いたように振り返ったリクオの目に映ったのは頼もしい姿。
「リクオ、お前が望むなら遠野はお前の力になる」
怪我をした冷麗と土彦、そしてその二人の側にいる紫を除いた三人の遠野妖怪。
イタク、淡島、雨像。
頼もしい三人の姿だった。
「イタク…」
驚いて見つめるリクオをジッと見つめ返すイタク。
リクオはその眼差しを受け刀を肩に担ぐとニッと笑う。
「どーこ行ってやがったんだよ。逃げ出して遠野に帰ったのかと思ったぜ」
「！！」
そんなリクオの言葉を聞いて黙って聞いていられる遠野妖怪達ではない。
「バッキャロ〜リクオォ！！こういうときゃ遠野出たときみてぇ〜に正直に言えよな！！力貸せってよ！！」
答えたのは、リクオを指差して笑う淡島だったが。
「六人、これで…全部かい。ごちゃごちゃやってんなよ」
待ちきれずに伸ばされる土蜘蛛の腕。
「みんな下がってな！！」
咄嗟に前に出たのは雨造。
「沼河童忍法、泥沼地獄。ケケケ、腕を入れたらなかなか抜けらんねぇぜ。蜘蛛の糸と…どっちが粘っこいかなぁ〜？」
雨造の周囲に広がる泥の沼。
しかし、それを突き破って届いた土蜘蛛の拳を自身の甲羅で受け止め地面に着地する。
「おおお…ほほほ。土蜘蛛〜さすが雨造妖怪番付横綱だじぇ…こりゃあ、倒すの時間かかるぞぉ〜」
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
