人である部分 ページ26
二人が言い争いをしている中、牛鬼もまたリクオの元へと急いでいた。
今のリクオでは鞍馬の天狗達には敵わない。
リクオは遠野での修行にてぬらりひょんの本質を掴んだ。
牛鬼には信じがたいことだが、リクオは土蜘蛛に攻撃された時もその畏で認識を微妙にずらしていた。
しかし…いまだ自分自身は掴めていない。
リクオは、人の柔軟さを忘れている。
天狗の攻撃を刀で受け止めるリクオ。
「だったら…下がってろよ鴆！！……倒す！！」
牛鬼もかつては人だった。
だから、リクオが周りに人の弱さを見せないようにしている気持ちも理解できる。
しかし、リクオの父である奴良組二代目鯉伴は違ったのだ。
「オレは半分人間だから、てめーらに頼るのが一番だと思うんだ」
そう言って飄々と笑う鯉伴の言葉を思い出す。
仲間を信じ頼ることができた。
人である部分を認め…人にしか出来ぬことをやってのけた。
「共に闘ってくれよ…なぁ、てめーらの力…オレにかしてくれよ」
自分の弱さを認めて相手に頼る。
一瞬簡単に思えるかもしれないが、それはかなり難しいことなのだ。
「くそ…ハァハァ、こいつら…めちゃくちゃ強ぇ…」
天狗達に取り囲まれて息を切らすリクオは、自分にはやはりこいつらを蹴散らす刃がないのだと感じていた。
鴆を守るための刃が欲しいと。
百鬼夜行を守るための力を。
「リクオ、オレは下がらねぇし…逃げたくもねぇ！！オレは…役に立ちてぇんだよ…てめぇのな」
鴆のその言葉に目を見開く。
牛鬼は諦めたかのようにその目を伏せる。
三日の特訓では無理だったのだと。
かつてリクオの父が使ったその業は…心から信頼されるような大きな畏の持ち主でなければならない。
大きな畏が…より大きな畏を纏うための…"百鬼夜行の御業"
「オレはてめーと盃交わした百鬼夜行だろーが！！」
「鴆…」
リクオの背後に背中を預けるようにして立つ鴆を振り返ったリクオは、指が羽織の方のあたりに触れているのに気がつく。
「…わかったよ。ウルセェ下僕だぜ」
「わかりゃいいんだ」
ニィッと笑い合う二人。
「てめぇの毒の羽、オレの為に広げてくれ」
天狗達に向かい合って刀を構えるリクオ。
「まかしとけ若頭っ」
抜いた刀に広げた鴆の羽が乗っかるように広がっていく。
その不思議な感覚に二人して驚きを隠せずにいた。
その光景を、近くまで駆けつけた牛鬼が目を丸くして見ていた。
今感じた畏は…まさか、これはリクオの畏なのか！！と。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
