修行再開！？ ページ24
「ここは鞍馬山ってぇとこらしいぜ。後の源義経…牛若丸が鞍馬天狗に修行してもらった伝説の地だそうだ。『木の根道』なんてたしかにもってこいの場所だよな」
グツグツと美味しそうな囲炉裏の鍋の前でそう説明するのは鴆。
「…今日も夜が明けちまうな。……今、すげぇ顔してるぜ…リクオ」
ニヤリと笑って向いに座る青年に目を向ける。
そこに座るのは、傷だらけのリクオ。
リクオは何も言わずに鴆が用意してくれた夕飯をバクバクとかきこむ。
「…遠野ではよける以外に家事もおぼえたんだってな、リクオ。明日も修行なら、お前がつくれよリクオ…」
悪い顔で笑いながら自身のお椀を手にする鴆に、リクオは目を伏せて手を止めると修行の様子を思い出す。
刀を手に山を駆けるリクオに、妖怪達が襲いかかってくる。
鏡花水月でそれを躱して妖怪達に斬りかかる。
その姿はいつの間にか昼の姿から夜の姿へと変化していた。
「ぬらりひょんの畏…認識をずらし敵の畏を断つ…だが、そのままでは土蜘蛛は倒せない」
そんなリクオに背後から声をかけるのは牛鬼。
「"夜"の姿になったか。では次の段階だ」
その瞬間放たれる牛鬼の畏とプレッシャーに身構える。
「手に入れるのだろう、大きな敵に届く刃を。時間はないぞ、そのことだけを考えろ！！」
再びモグモグと口を動かしながらブツブツと呟くリクオ。
「土蜘蛛に届く刃…オレのどこにある？それがなけりゃ何もできねぇ」
そんなリクオを呆れたように見つめる鴆。
「そればっかりだぜさっきから……まぁ今は休めや！日が昇りゃ今度は昼の姿でやんだろ？」
ふと、窓から入り込んでくる木の葉とともに強い風が吹き荒れる。
「なにっ……」
突如巻き起こった強風と同時に部屋に入り込んで来たのは天狗達。
「……！？おいおい、修行再開にゃ早すぎんだろーが牛鬼ィ」
反射的に刀を構えたリクオは、戸惑う鴆の体をグイッと引き寄せる。
「鴆！こっちだ！！」
ジャキッと武器を構える天狗達は、刀を抜くと斬りかかってくる。
躱して背中に自身の刀を当てることで、ドサっと崩れ落ちる。
「どうなってんだよ。さすがに休み無しすぎんじゃねーかぁ！？」
「下がってろ。こいつら…本気でオレを殺そうとしている」
刀を構えるとその目をスッと細める。
「何？」
「鴆…オレがこいつらのスキを作る。そのスキにお前はここから逃げろ！！」
「お…おいリクオ！？」
堂々と言い放ったリクオに、驚いて目を丸くする鴆だった。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
