青田坊 ページ23
もしAがここに残っていれば、今頃京妖怪達の手の中にいただろう。
そして、しょうけらに触れられてしまっていただろう。
こんな気持ちの悪い奴が、奴良組の大切なお姫様に触れるなど考えただけでも反吐が出る。
彼女は、そんな悍ましく汚らしいものが触れていいような人ではない。
しかし、その奴良組のお姫様であるAなら、今彼らの腕の中にいるカナ達とは違って意識を失わさせてはくれなかっただろう。
恐らく、無理矢理にでも青田坊の後を追いかけて来てしまっていた。
そうして、必死に恐怖を押し殺しながらも堂々としょうけらを見据えていたはず。
あの人はそういう人だ。
自分は奴良組にとって足手纏いだと嘆きながらも、見捨てることが出来ずに踏み込んでくる。
だからこそ目が離せなくなる。
そして、そんなAのことを無碍に扱うことなど自分に出来るはずがないのだから。
「関係なくはない、全ての人間は神への供物なのだ。神におうかがいをたてよう」
しょうけらはカナの顔をぐっと天に向ける。
「神よ。この子らの罪を……受け入れますか？」
パァァと眩しく光り輝く。
「おお、天よ……主よ……わかりました。今すぐこの子らを殺します。羽衣狐様に……生き肝を届けましょう！！」
その言葉に、青田坊の胸元の髑髏が勢いよく弾けた。
青田坊は思い出していた。
青面金剛…荒ぶる神で病をまきちらす極悪な鬼神。ときには人を救う神と祀られることもある。
僧兵として破戒の限りをつくして捕えられた青田坊は、処刑される寸前にある聖人によって目をひらかされ告げられた。
これからは犯した罪の数だけ人を救え。「人」に戻れるか「鬼神」になるかは自分次第だと。
そして、人のために生きるうちに周りには戦で家や親を失った子供達が集まっていた。
しかし、そんな子供達を襲う男を、子供を守るために殺したことで鬼神になった。
「子供たちから手ェはなせや」
片手にカナ達を抱きとめたまま、「ひかりあれ」と言おうとしたしょうけらの言葉を遮るようにその顔を地面に叩きつけた。
「……なっ！？」
「しょうけら様…」
「お、おのれぇ！！」
そして、驚く秋房の手を掴む。
「いくぞ」
「！！…き、君は……」
驚き問いかけてくる秋房の手を取り背に庇いながら、空中からこちらに向かって来る京妖怪達に向き直る。
「青田坊だ」
答えると、片手にカナ達を抱きながらその全身に畏と怒りを立ち昇らせる。
「守るぞ。ここはくずしちゃいけねぇ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
