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妹の力 ページ11

「いたっ…何すんだ鴆くん!?」

「てめー何言ってんだクルルゥアア!!大将だろーがぁ!?たとえ人助けでも敵討ちでも、てめーが大将なんだからどーどーとやりゃあいーだよ」

「鴆くん…」

ニヤッと笑う鴆の言葉に少し勇気づけられる。

「ま、どの道あいつらが天下とりゃオレらはきっと全滅だ。あ、牛鬼の奴日が昇ったらすぐ来るらしーぜ。オレはさー人の姿で修行させんのも何かあると思うぜー?」

「そ、そーなんだ…」

悩ましげな顔で考え込むリクオを見つめる鴆の眼差しからはスッと笑みが消えていく。

「…Aのことか?」

「……うん。ボク…妹のことなのに、Aのこと何も知らなかった。Aが使ったあの力…あれは…」

牛鬼との修行の前に悪夢で見た、父が死んだ時の光景。

あの時、自分を守るために前に立ってくれた後斬られて倒れてしまった父。

その父の側にしゃがみ込み、呼びかけるリクオの言葉にも一切耳を貸さない程に集中し、父の体に手を翳したA。

その手のひらからは氷麗の体を癒したのと同じ淡い光が輝いていた。

あの時程強い光ではなかったけれど。

その後倒れ込んだ妹と、昔同じように倒れた妹の姿を思い出す。

あの力を使ったことで熱を出してしまったのだとしたら。

「…つららの傷は、完璧とはいえなかったけれど塞がっていた。あれはAがやったんだと思う…」

鴆は小さく呆れたようなため息をついた後、自分の頭をクシャクシャにかき回した。

「…Aが使ってたあの力は、恐らく治癒能力だ。確か…総大将の…お前のおばあさんは治癒能力が使えたはずだ」

聞かされた言葉に僅かに目を見開く。

「…鴆くんは……知ってたの?」

俯いたリクオの表情は鴆からは窺えなかったが、声音と声の小ささから落ち込んでいることだけは感じとれた。

「…いや、詳しくは知らねぇ。ただ…あの熱がただの風邪か何かじゃないってことくらいはな。本人に聞いても…頑なに何でもないと言おうとしなかったからな」

応える鴆の声や表情も何とも形容し難いような複雑な顔をしていた。

幼少期から側でその体調を気遣い、その容体を診てきた鴆だからこそ違和感に気がついたのだろうと思う。

そして、妹はやはり家族である自分にも主治医といっても過言ではない鴆に対しても、何一つ打ち明けてはくれないのだなと。

「…今回のことが落ち着いたら、話せばいい。そうでもしないと、あいつはー」

鴆から聞かされたのは、真。

妹の哀しい決意だった。

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作者名:エッグタルト | 作成日時:2024年3月7日 1時

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