四分の一どころか普通の人間でした五 (ページ2)

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通用しない畏ページ2

「足が折れてへんならなんとかなる！この場は…どーにかして逃げるで！運が悪かった…土蜘蛛と出会うとは。土蜘蛛とはまともにやりおうたらアカン。遭遇してはならない妖なんや」

十三代目の言葉に息を呑むゆらの近くで、ガラガラと瓦礫の下から姿を見せたのは負傷しながらも無事なリクオや奴良組、遠野妖怪達。

殺気立つ彼らを見て、十三代目は戦ったらアカンと焦りを募らせる。

そんな彼らの後ろには、守られるようにその場にしゃがみ込むAの姿も。

彼女はただ顔を青くして土蜘蛛を見つめていた。

そんな少女を見て十三代目はよく無事だったとその目を丸くする。

そういえば、彼女は土蜘蛛の気配に気がついていたような素振りを見せていた。

まぐれかもしれないが、その感知能力の高さには十三代目も驚く程。

恐らく誰も気がついていなかったであろう妖気に直ぐに反応した。

しかし、彼女は霊力も妖力も持たない普通の人間。

この場にいるには余りにも危険すぎる。

青い顔で震える体を抱きしめる少女を見て険しい視線を向ける。

果たして、彼女を守ってやれるかどうか。

土蜘蛛ーそれは神も仏も妖も遭遇してはならない。見たら、ただじっと過ぎるのを待て。

「立ってくるたぁ〜いい度胸よ！！」

煙を吐き出しながらニイイと笑う土蜘蛛。

「もっともっと楽しませてくれ！！」

そう言って楽しそうに自信の腕を伸ばしてくる。

「来たぞ！！心せよ皆の者！！」

構える黒田坊や淡島、首無の隣で頬についた血をぐっと拭い刀を抜くリクオ。

土蜘蛛の腕がリクオの体を貫いたことで「若！！？」と青ざめて悲鳴を上げる雪女。

Aも、声は出さないもののゴクリと唾を呑み込んだ。

これは…この妖は…鬼童丸とも違う……！

「案ずるな雪女！！あれこそリクオ様が遠野の地であみ出したぬらりひょんの奥義、認識をずらす…鏡花水月」

ビクッと体を震わせる雪女にそう説明する黒田坊。

鏡花水月……？それって、確か……おじいちゃんの……？

「こざかしいわ」

しかし、土蜘蛛はリクオの鏡花水月を容易く破ると、「まずはてめーだ」と驚くリクオを勢いよく蹴り付ける。

リクオの畏が通用しないことに驚いたイタクは、「まずい…」と鎌を構えて淡島や雨造と共にリクオの元へ走る。

「リクオ！！てめーは下がってろ！！オレたちがやる！！」

けれど、土蜘蛛は起き上がれないリクオの側の地面を殴りつけるとその反動で宙に浮いたリクオの体をガッと掴み、そのまま地面に投げた。