四分の一どころか普通の人間でした (ページ6)

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幼少期④ー覚醒する兄ページ6

一方。

バスに乗らずに歩いて帰ろうとしたリクオは、たカラス天狗に抱えられ空を飛んでいた。

「なあカラス天狗。ボクって…人間なのかなぁ…？」

「そりゃまあ、お母様もおバア様も人間ですから…」

その言葉に目を輝かせるリクオだったが、次に聞こえた言葉に拗ねたように唇を尖らせる。

「でも総大将の血も…当然…四分の一は入っております。ですから…もっと堂々としていればよいのです」

その時ふと頭に浮かんだのは、先程自分のせいで傷つけてしまった一人の少女の姿。

リクオにとっては生まれた時から一緒にいる、何よりも大切な女の子。

体が弱く、常日頃自分が守ってやらなければと思わせるたった一人の妹。

「…。ねえ、Aは…？」

リクオの姿に、先程まで饒舌だったカラス天狗が言葉に詰まる。

「A様は…」

リクオには、何故カラス天狗が言い淀むのか理解できずに首を傾げる。

どうして、妹も皆も、自分には話してくれないのだろうかー。

悶々とした何かを抱えながら家に着いたリクオの目に映るのは、テレビの前に集まるみんなの姿と自分の姿を見て安堵の表情を浮かべるその様子。

そして、テレビから聞こえてきたのはー。

「中継です！！浮世絵町にあるトンネル付近で起きた崩落事故で路線バスが”生き埋め“に…。中には浮世絵小の児童が多数乗っていたと見られ…」

先程妹や幼なじみが乗ったバスが事故に遭ったというニュースだった。

リクオが無事に帰って来たことに安堵の涙を流すみんなの側で、リクオの頭は冷えていく。

「…助けに…行かなきゃ…」

駆け出すリクオと、そのリクオに付き従う青田坊や黒多忙を始めとする妖怪達。

しかし、そのリクオを静止する声が響いた。

「なりませんぞ…人間を助けに行くなど…言語道断！！我々は妖怪の総本山…奴良組なのだ！！人の気まぐれで百鬼を率いらせてたまるか！！」

その言葉に抗議する青田坊に木魚達磨はその意思を曲げない。

「妖怪とは…人々におそれを抱かせるもの。それを人助けなど……笑止！！」

喧嘩に発展した木魚達磨と青多忙を止めたのは、それまで黙っていた少年の声。

「や…やめねえか！！時間がねえんだよ。おめーのわかんねー理屈なんかききたくないんだよ！！木魚達磨」

白銀の髪に紅い瞳へーその姿を変えていく。

「オレが『人間だから』だめというのなら、妖怪ならば、オマエらを率いていいんだな！？だったら…人間なんてやめてやる！」

奴良リクオー覚醒の瞬間である。