昼のリクオの答えと継がない理由 ページ44
目が覚めた牛鬼の体には包帯が巻かれ、布団に寝かされていた。
「あ、起きた？ケガはなんとかなったみたいだ。よかった！」
明るい笑顔を浮かべながら話すのは人間の姿のリクオ。
「君の部下は迅速だね、牛鬼」
「……リクオ……？」
呆気にとられ、怪訝そうに呼びかける牛鬼の頭に乗せられたのは氷嚢。
「『氷』はこれくらいがちょうどいいか」
「リクオ……本当に…朝になると…変わってしまうのか…」
そう呟く牛鬼に、リクオは戸の向こうを見つめながら「……今は…人間だよ」
「覚えて…いるのか」
目を丸くして問いかける牛鬼に、リクオは強い意志を持った目をしてはっきりと答える。
「覚えてる。昨日のことも、旧鼠のことも、蛇太夫もガゴゼも。全部、ボクが殺ったって。知ってるよ……妖怪の時はなんだか血が熱くなっちゃって…我を忘れてしまうってことも…」
「リクオ…」
「そろそろ覚悟を決める時なのかな…いつまでも目を閉じてられない。怖いけど…本当は平和でいたいけど…"守らなきゃいけない仲間"もいる。この血にたのらなきゃいけないときもあるって…知ったから」
戸の向こうで聞いたAは、そのリクオの言葉に胸がギュッと痛んで、思わず胸元を押さえる。
リクオは笑顔で戸を開け牛鬼に振り返る。
「だからボクは、そこまで組のこと…思ってくれる牛鬼が百鬼夜行にいてくれたら…うれしいよ」
かつてのぬらりひょんと同じーぶつかって己を上回ってなお自分を認める姿に目を見開く牛鬼。
そこで、戸の前に座り込むAを見つめる。
「A！？」
驚くリクオにAは少し切なそうに笑みを浮かべる。
「…継ぐんでしょ、三代目」
リクオは妹の目をはっきりと見つめる。
「うん、継ぐよ」
やっぱり…そうだよね。
生まれた時からわかっていたことだ。
わかっていた筈なのに、何故か傷ついている自分に少し驚き自嘲する。
バカだな…私。今更、なんの期待もしてなかったくせに…。
勝手に傷つく自分は、なんと自分勝手なことだろうか。
「…Aは、いいの…？」
その問いかけに、牛鬼とそして縁側に座っていた黒羽丸やトサカ丸も少し心配そうにAを見やる。
Aはそんな優しい彼らに少し罪悪感を抱きながらリクオに向かって笑いかける。
「無理だから。私は…私には…ぬらりひょんの血は流れていないから…。ずっと…黙っててごめんね」
知らされた事実に目を見開くリクオ。
牛鬼達もまた、Aが真実を告げたことに驚いていた。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
