リクオの答え ページ43
悲痛な顔と声で訴える牛鬼。
「オレがふぬけだとオレを殺して自分も死に、認めたら認めたでらそれでも死を選ぶたぁ、らしい心意気だぜ牛鬼。だか死ぬこたぁねぇよ。こんなことで……なぁ？」
牛鬼にニヤリと笑うリクオに目を見開く牛鬼。
「若！？こんなことって…！！これは大問題ですぞ！！」
「ここでのこと、お前らが言わなきゃすむ話だろ」
声を荒らげる鴉達にもしれっとそんなことを言ってのける。
「牛鬼…さっきの"答え"人間のことは…人間ん時のオレにきけよ。気に入らなけりゃそん時斬りゃーいい。その後……勝手に果ろ」
リクオはそう言って刀を鞘におさめる。
牛鬼はそのまま意識を失う。
その瞬間思い出したのは、盃を交わした際に総大将に言われた言葉。
「オレがお前の親になってやるよー梅若丸」
そこへ、息も絶え絶えになりながら現れたのはびしょ濡れのA。
元々体が丈夫ではないAは、降り続く雨の中石段を登り続けたこともあってか、過呼吸を起こしそうになっていた。
自分のところに来た馬頭丸の姿を見つけ、リクオの身を案じて別荘を飛び出した。
そして、石段の途中で怪我をした氷麗とその氷麗を抱いたまま眠っているカナを見つけた。
捩眼山と聞いて心はざわめき、牛鬼の名を聞いて確信に変わった。
きっと兄は今、牛鬼と対峙しているのだと。
無力な自分に何が出来るのかとも思ったが、蚊帳の外に置かれ続けるのも嫌だった。
自分から関わらないようにしている癖に、そんなことを考えてしまった。
だから走った。
きっと兄は無茶をするから。
そして、牛鬼もー。
そんなAの姿を見つけて驚いたのはリクオだけではなく。
「姫！？」
「A様！？なぜここに…！？」
驚く鴉達に意識を向ける余裕もなく、Aの視線は血を流す兄と倒れ伏す牛鬼に向けられている。
「A…お前…」
色々と問いかけようとしたリクオの言葉は、声も出さずにその大きな茶色の目から大粒の涙をこぼす妹の姿を見た瞬間に引っ込んだ。
「…っ、無事…なの…？」
「…あ、ああ。オレも…牛鬼もな…」
妹が泣いたところを見たことがなかったリクオの返答が一瞬遅れる。
Aはその言葉に一瞬安堵したように見えたが、そのままリクオの正面に座り込んで着物の端を掴むと俯いた。
「…バカ」
それ以上の言葉は出てこなかったが、リクオにはその一言で充分だったらしい。
リクオは何も言わず泣いているAの頭に手を置くとくしゃりと撫でた。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
