リクオと牛鬼 ページ40
驚き息を呑むカナの腕の中に、リクオはそっと氷麗を手渡す。
「あ…あの…」
「あ…あの…行くとこがある。カナちゃん、その娘を……たのむぜ」
何か問いかけようとするカナに、リクオは真剣な表情で氷麗を託す。
怪我をしている氷麗の様子に気づき色々と考えるカナだったが、何一つわからぬまま。
そんなカナをリクオだと思っている氷麗は、眠ったままカナの首に腕を回していた。
捩眼山の山頂ではー
牛鬼組の組長である牛鬼が目を伏せながら思いを馳せていた。
脳裏に浮かぶのは、かつてリクオがガゴゼを討った時のこと。
その事実に喜び、その才能に歓喜して木魚達磨に話すも、木魚達磨はリクオの血の薄さを冷静に指摘した。
しかし、牛鬼は信じていた。
夜は妖怪の姿であることに変わりはない。
きっと、組のためにも立派に成長してくれるだろうと。
しかしー。
「何を考えている、牛鬼」
そんな牛鬼の背後には、いつの間にか不敵な笑みを浮かべながら佇むリクオの姿。
「あぁ、やはり来られましたか…血を継いでいるのは確かなようだ」
牛鬼ー顔は牛、体は土蜘蛛。
人に化け、だましあやつり襲う。
現したその姿。
人々は語る。
「名よりも見るはさらにおそろし」
外は雷鳴が鳴り響いていた。
「答えな、牛鬼。何故こんな短絡的にーオレを殺そうとしたのか」
牛鬼に刀を向けるリクオ。
「"牛の歩み"と言われる程思慮深いお前が何故。まさかあのバカみてぇな旧鼠も…お前なのか」
しかし牛鬼の口からこぼれ落ちたのは違う言葉。
「……午頭丸を…倒したのですか…。『側近』を殺されたか、はたまた『御学友』を殺されたか…引き金を引かれて……『その姿』に変わったのですか？」
そう挑発するように笑う。
そんな牛鬼を鋭い目で見つめるリクオ。
そんなリクオに牛鬼は質問を重ねる。
「どの段階からです？夜だから？自らの意志で……変わられたのか？聞きたいですな、リクオ様」
「……質問してるのはこっちだよ。その気になればその首、はねることも出来る…」
怒りを向けながら牛鬼の首に刀を向けるリクオだったが、牛鬼も同じようにリクオの首に刀を突きつける。
ビリビリと伝わってくるのは確かな殺気。
「私の質問に答えるべきだ、リクオ。ひとつずつ『明確』に…答えろ…一つでも納得できねば耳をそぐ、腕を落とす。その気になれば首を落とすことが出来るのはお主だけでは……ない！」
互いに刀を首に突きつけ合った緊迫した状況が生まれていた。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
