梅若丸 ページ33
捩眼山への道中、リクオ達一行は妖怪ポーカーを行っていた。
しかし、勝つのはリクオ、ゆら、そしてAである。
妖怪の総大将であるぬらりひょんの孫と陰陽師の末裔なのだから、当然"妖怪運"もあるだろう。
そんなこんなで電車が到着したのは寂れた古い駅。
一行はMAPを手にする清継の後に続いて歩き出した。
一時間後
彼らは山の中を歩いていた。
「うん?なんやろ…あれ…」
ゆらが指差したのは、お地蔵様が奉られている小さなほこら。
しかし、霧が深くて何が書いてあるのか誰も読み取ることができない。
見に行こうとしたゆらに対し「『梅若丸』って書いてあるよ!!」
近づいたゆらの目には、確かに梅若丸の文字。
「お兄ちゃん…普通はあの文字、見えないよ…」
「え!?」
カナが隣で少し怪しんでいたこともあり、Aは呆れたようにそう告げた。
そんな彼らの前に現れたのは、清潔感のない汚い男性。
「ああ!!あなたは!!作家にして妖怪研究家の…化原先生!!」
一人喜ぶ清継は化原先生という男性とお互いに握手を交わす。
化原先生は、女子達が妖怪についた興味を持っていることに嬉しそうに距離を詰める。
「梅若丸って…何ですか?」
「うむ…そいつは…この山の妖怪伝説の…主人公だよ。梅若丸…千年程前にこの山に迷い込んだやんごとなき家の少年の名…。生き別れた母を探しに東へと旅をする途中、この山に住まう妖怪におそわれた」
一行はほこらのあたりに腰を下ろして男の話を聞く。
「この地にあった一本杉の前で命を落とす。だが母を救えぬ無念の心が、この山の霊障にあてられたか哀しい存在はと姿を変えた。梅若丸は"鬼"となり、この山に迷い込む者どもをおそうようになった。その梅若丸の暴走をくいとめるためにこの山にはいくつもの供養碑がある。そのうちの一つがこの『梅若丸のほこら』だ」
説明を聞いたリクオは、少し考え込むような表情を浮かべる。
対してAも、一人その視線を少し鋭くしていた。
もう少し歩き回ろうと呼びかける化原先生の後に続いて歩き出しながら
「リクオ様〜行く前は心配でしたけど旅行って楽し〜ですね〜。梅若丸なんて妖怪知ってます〜?」
「つらら。ここ…少し危ないかも知れない」
楽しそうにはしゃぐ雪女に真剣な表情でそう告げるリクオ。
梅若丸って、どこかで…?
Aは必死に以前聞いたことのある話を思い出そうとしていた。
やがて彼らはより山の深く、霧の濃い山の中へと入って行く。
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作者名:エッグタルト | 作成日時:2024年1月15日 0時