帰り道 ページ30
「ま…待ってぇ。お前が妖怪の主か！！」
ゆらからの呼びかけにリクオは横目で振り返る。
「お前を倒しに来たんや！！次に会う時は絶対…倒す！！」
制服を破かれたゆらに自分の羽織をかけてやった首無をからかいながらリクオはフッと笑みをこぼす。
「せいぜい気をつけて帰れ。首無…お前女に甘いな」
カナとゆらの心配そうな視線にAは安心させるように、だが、少し疲れたように笑った。
「大丈夫、だよ…ありがとう。また学校でね」
二人と別れた後、リクオは少し不満そうに妹の頭を小突いた。
「…いたっ。もーなに…」
けれど、リクオの紅い瞳に不機嫌そうな色が見えたのを感じとると、Aは俯いて目を逸らす。
「…ごめんね、また…迷惑かけちゃった…」
そんな妹の様子にリクオははあーっとため息をこぼす。
嫌われた…？
その息に何を感じ取ったのかびくっと体を震わせる少女を見て、自分の羽織をかけてやると頭に手を置いた。
しかしこちらに向けられた兄の視線はどこまでも優しくてただ純粋に妹を心配するそれ。
「何驚いてんだい。また無茶しやがって…護衛つけるぞ」
「い、いらないよ！私なんか、お兄ちゃんに比べたら…っ！」
「今回狙われただろうが」
狙われたのは、偶然二人と一緒にいたからだし…。
「…怪我してる猫がいたから、良太猫のところに連れて行ってたの。昔から…お父さんによく連れて行ってもらってたし…私…動物好きだし」
リクオと違い外で遊ぶことができなかったAを憂いた父ー鯉伴の気遣いと優しさだ。
まあ、普通は幼い少女を連れて行くような店ではない。
しかし、事情を知る良太猫はいつでも優しく迎え入れてくれ、二人は穏やかに友人関係を育んでいた。
そのため、旧鼠のことには気がついていたのだが、まさか、自分がその当事者になるとは思いもよらず。
そういった事情を説明すると納得したようだが、それでもリクオの機嫌は直ってはくれない。
「…あんまり心配かけるんじゃねぇよ。護衛の件は要相談だ」
「本当にいらないよ…」
"人間"の私なんかにー。
「文句があるならこれ以上、危険な真似はするな。丸腰で妖怪に立ち向かってんじゃねえよ」
「それはー…約束は…できない、と思う…」
正直に告げたAの腰をぐっと引き寄せるとそっと優しく抱きしめた。
「なら、オレが守るしかねぇな」
これ以上、妹を傷つけるわけにはいかない。
リクオはそう不敵に笑うと慌てるAを抱き上げて帰路に着く。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
