ねずみ狩り ページ29
現れた百鬼夜行に目を見開くゆらの視線は、その先頭に立つ男に向けられていた。
「どうした雪女。出入りがそんなに楽しいんかい」
「だって…」
雪女の脳裏に浮かぶのは、陰陽師であるゆらを助けに行くことに渋る妖怪達に向けたリクオの言葉。
「うだうだうるせぇよ。天敵に"かし"を作るのも…悪くねぇぜ」
その頼もしい姿。
突然の妖怪達の登場に慌てる旧鼠だったが、すぐに冷静さを取り戻す。
「回状は！？回状を見せろ！！ちゃんと廻したんだろーなぁ！！」
「ヤツが書いたのなら破いちまったよ」
そう告げたリクオに激昂した旧鼠は人質であるゆらとカナを殺そうとするが、二人は青田坊と首無によって助け出されていた。
「どうする夜の帝王。人質が逃げちまったぜ」
その言葉に腹を立てる旧鼠だったが、隣に立っていたAの腕を強く掴もうとした。
「ハッ、だがまだコイツがいるー。役立たずのあのガキの妹だ」
リクオはその言葉とAの服がはだけている状態を見て目を細める。が、一足遅く良太猫に救出されていた。
「なめやがっててめぇらみな殺しだぁー！！」
その状況を腹立たしく思った旧鼠と奴良組との交戦ー開始である。
ねずみ退治を競い合う黒田坊と青田坊。
雪女や毛倡妓も襲いかかってくるねずみ共を凍らせたり髪で倒していた。
次々と倒される部下達の姿に動揺する旧鼠。
「なんで…てめーら…誰の命令で動いてる…百鬼夜行は主しか動かせねーんじゃ…」
「何言ってんだ、目の前にいるじゃねーかこの人こそが！！ぬらりひょんの孫！！妖怪の総大将になるお方だ！！」
堂々と告げる良太猫。
「そ、そいつが…あのガキの…覚醒した…姿…！？やっぱり…あんとき殺しときゃあよかったじゃねーかぁ！！」
追い詰められた旧鼠は自身の姿を巨大なねずみへと変化させてリクオに襲いかかる。
その様子に悲鳴こそ上げないものの小さく息を漏らすAを見ると、リクオは庇うようにそっと後ろに下がらせる。
「あ…」
「追い詰められて牙を出したか。だが、たいした牙じゃあないようだ。てめぇらが向けた牙の先。本当に…闇の王んなりてぇなら、歯牙にかけちゃならねぇ奴らだよ。おめぇらは…オレの"下"にいる資格もねぇ」
持っていた巨大な盃にフッと息を吹きかけると旧鼠はたちまち炎に包まれる。
「奥義明鏡止水"桜"その波紋鳴りやむまで全てを…燃やし続けるぞ。夜明けと共に塵となれ」
その光景に息を呑むゆらやカナと静かに見つめる奴良組の妖怪達。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
