噂の旧校舎 ページ11
その夜、旧校舎の前に集まったリクオは、そこにいるカナの姿を見つけて驚きの声をあげる。
「カナちゃん!?…なんで!?怖いの苦手なんじゃ…」
「う…うるさいな〜いいでしょ!?」
「ま、まあまあ…落ち着いて。ね?」
そんな二人を宥める少女の姿に、リクオはより大きな声をあげる。
「A!?なんで…いつの間に…!?」
「カナちゃんに頼まれて…断れなくて。私もちょっと気になってたから」
あの後、カナからこっそりと旧校舎に行きたいので付き合って欲しいと頼まれていたのだ。
リクオに話せば反対されるだろうと予想がついていたため、こっそりと家を出てきたのだが。
目が合ったリクオは少し唇を尖らせて心配だというオーラを全面に醸し出している。
お兄ちゃん…ちょっと過保護なところがあるからなぁ…。
幼少期によく熱を出して寝込んでいた印象が強いのか、はたまた"妹"だと強く意識しすぎているためか。
母や祖父ですら何も言わないような些細なことですら心配して青くなるのだ。
そんな兄の様子に少しモヤモヤしたものを感じつつも参加メンバーを確認していたAの目に映ったのは、清継に自己紹介している男女。
「及川氷麗です!こーいうの…超好きなの!」
「オレもすきなんだ。倉田だ」
そんな様子を呆れたように見つめるリクオを見ながら、Aは目を丸くして二人を見つめていた。
もしかして…雪女と青田坊…?
昔から妖怪の気配に敏感なAは、少しも気がついた素振りを見せない兄ーリクオをよそに人間に化けた2人の姿にすぐに気がついた。
そんな2人と不意に目が合う。
二人もリクオ同様Aがいることに目を丸くするも、軽くリクオの方に視線をやって小さく頷く。
あ、そっか…。お兄ちゃんの護衛なんだ…。
察したAはリクオに気づかれぬよう小さく微笑むと、旧校舎までの道を説明する清継へと意識を向けた。
グラウンドの側のフェンスから道路に出て渡った先に、噂となる旧校舎があった。
中は薄暗く、廊下や扉のガラスも割れており不気味な雰囲気が漂っている。
怖いものが得意なわけではないが、一応家に妖怪がいるため多少は慣れているAは、リクオにぴったりとくっつくカナの後ろから最後尾を歩いていた。
ひとまず入った部屋を探索することになった一行だが、リクオもAもあちこちにいる妖怪にすぐに気がつく。
そのまま呑気に見て回るAをよそに、リクオは妖怪が見つからないよう隠すのに必死になっていた。
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作者名:エッグタルト | 作成日時:2024年1月15日 0時