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私は静かに立ち上がると、女の子を抱いているテロリストに真っ正面から近付いていく。
「その時、私はどうしたと思う?それはね―」
太宰さんは相変わらず小話を続ける。
私はさらに距離を詰める。
テロリストの視線は、こちらに向いている。
でも、その視線は、
私には向けられていない。
「な、なんなんだよお前!」
男はそう言うと女の子のこめかみから銃口を離し、こちらに向けた。
今だ。
私は銃を持つ男の右手に素早く掴みかかった。
それと同時に、
ふわりと、私の姿が現れる。
「なッ!?」
驚く男をよそに、私は銃を奪い取り遠くへぶん投げた。そして、男の右頬に思いっ切り拳をぶつけた。
男はよろめき、女の子から手を離す。私はその隙に女の子の腕を引いて、ぎゅっと抱きしめた。
「閃光榴弾!」
国木田さんがそう叫んだ。私は女の子の顔を胸にうずめて目を閉じた。
「ぐあ!」
「目がァ目がァ・・・・・・!」
テロリスト達のそんな声が聞こえたかと思うと、数十秒後には大勢の安堵や感謝の声が聞こえてきた。
私は顔を上げた。
ついさっきまで暴れていたテロリスト達たちは、全員地面に伸びていた。その傍らには国木田さん達の姿があった。
私はほっと安堵の息を吐いた。全身の力が抜けていくようだ。
「花!」
女性の必死そうな声がした方を見ると、涙で目を真っ赤にした30代の女性がこちらへ駆け寄って来た。
「ママ!」
女の子はそう言うと、私の腕をすり抜けて女性に抱きついた。
2人は強くお互いを抱きしめると、お母さんが顔を上げて私を見た。
「うちの子を助けてくださって、本当にありがとうございました・・・・・・!何とお礼をすればいいか・・・・・・!」
泣きながらそう言って何度も頭を下げる彼女の肩に手を置いて、私は言った。
「もう十分ですよ、お母さん。娘さんがご無事で良かったです」
「・・・・・・ッありがとうございました!」
「お姉ちゃん、ありがとう・・・・・・!」
お母さんはもう一度そう言って深く頭を下げると、何度もこちらを振り返りながら、花ちゃんと一緒に手をつないで笑顔で去っていった。
私は手を振り、2人を笑顔で見送った。
パトカーのサイレンが風に乗って聞こえてきた。
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ニコ(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります! (2018年9月29日 16時) (レス) id: 3298d86e75 (このIDを非表示/違反報告)
かき氷(プロフ) - ニコさん» はい!コメントは消しておきました!!再新頑張って下さい!!応援してます!! (2018年9月29日 15時) (レス) id: 2d2e894556 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!フラグ外しました。気づいていなかったので、助かりました。 (2018年9月29日 15時) (レス) id: 3298d86e75 (このIDを非表示/違反報告)
なつ。(プロフ) - 面白いです! でも、オリフラついているので、作成画面で再確認お願いします。 (2018年9月24日 20時) (レス) id: d5d4dc728a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニコ | 作成日時:2018年9月17日 16時