第三符・まだいなくなっちゃ、困るなぁ。 ページ3
屋上から身を投げた私は、なぜか意識があった。
私は確かに落ちていったはず、どうして――?
「おっとぉ、まだ”そっち”に行かれちゃ困るんだよね〜」
その声を聞いたとき、私はテニスコートの端に座っていた。
それに、この声は誰なのだろうか。
辺りを見ても人はいない。校舎内にはまだ生徒たちがいるはずなのに、それすらもいなかった。
ふと、気付いた。
ここは、現世じゃない――。
「出てきてくれますか? あなたはどこにいるのですか?」
「あぁ、ごめんね〜。今見せてあげるから」
怪訝な表情をする私の眼前に、突然人の顔が現われた。
「!?」
「あっはは、ごめんごめんって! びっくりしたでしょ?」
その人は腹を抱えて笑った後、未だにこにこしながら私に向き直った。
「まぁよく聞いてよ。君、霊野幽衣は現世ではいなくなったことになってる。まぁ屋上から落っこちたんだから当たり前だけどね。それだから、君が現世でうろついちゃ、色々と面倒なことになるの。わかるよね? ――そこでだよ、今ここ、”結界”(むすびのかい)で動いてほしいわけさ」
「……いきなり色々言われても」
「まぁそうだよね、長くてごめんよ」
その人はこめかみをぽりぽりと掻きながら、苦笑いをした。
ここがその、結界なら、この人は人間じゃないのだろうか。
見たところ普通に影もあるし、姿もしっかり見えている。
見慣れないのは、和服を着ていることと、耳が尖っていることと、不思議な形状の杖を持っていることだった。
「あ、まだ名前言ってなかったよね、俺っちは乾叉(けさ)。今はそうとだけ呼んでくれればいいよ」
「私は――って、する必要あるんですか? 乾叉さん、私のこと知ってますよね?」
「まーまー、ここはもいっかい!」
乾叉さんに示唆されて私はもう一度名を名乗る。
「幽衣っちって呼ぶから〜、まぁよろしく!」
「よろしくです」
「あ、敬語はできるだけ使わないでほしいんだけど……いい?」
「まぁ、努力します」
ありがと〜、と破顔したところはまるで子供のようだった。
結界、ここはどんな世界なのだろう。
私は乾叉さんと学校敷地を出た。
―――
乾叉さんの由来は、太古の日本にいた八部衆のひとり、漢字を忘れてしまったのでひらがなで!
「けんだつば」からとりました。
確か音楽を司る御人だったと思うので、砕けた口調でチャラくしましたww
もしかしたら変わるかもしれません!w
第四符・帝も欲しがる音楽神兄弟→←第二符・神とヒトの世界を結ぶ処・弐
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作者名:NiKo-KiLL | 作成日時:2015年8月28日 0時