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＊ ページ45
話し方例
「やあ、俺は綾部史だ。君が今日の護衛かな？ よろしく頼むよ。……ところで、本は好きかい？ おすすめの一冊を出そう、少しそれについて話をしないか？」
「あーあ。これだから火を覚えたばかりで何かを燃やしたくて燃やしたくてたまらない人間は嫌いなんだよなぁ。彼らは燃やした本の冒頭一行でも読んだことあるのかなぁ？ ああ、俺はあるよ？ 本は読むためのものだと、きちんと知っているからね」
「あっはっはっは、燃やす、燃やすかい？ 始皇帝のようにナチのように？ いいぞやりな、俺が、俺こそがーー君たちが憎くてたまらない、人類の汚点、だよ。……ああ、勘違いだけはやめとけよ。俺を憎んでいるのは『人類』ではなく『君たち』だ」
「歴史、っていうのはね。事実があるだけじゃだめだ。昔のことは指させないからね。人が語らないと、語り続けないといけないんだ。事実が肉やら野菜やらスパイスやらだったら、『語る』というのは水を注いで火にかけるということ。つまり歴史は何万晩もじっくり煮込んだカレーかな？ 時には『良かれと思って』なんて言いながら、他の具材をぶち込みながらね！ ……あれ、でも。君の所のカレー、水しか入ってないね。大丈夫？」
「ふむ、確かにそうだねえ。語る奴がいなければ、その歴史は消えてしまう。どころか、減った時点で、少数派になった時点で不味い。語られないのなら、伝わらないんだもの」
「でもさぁ、君はいつから自分が『多数派』だと思い込んでた訳？ 俺の、俺らの中に何冊ーー何人語るモノがいると思う？ コツコツコツコツ教育を積み重ねて……『多数派』になれるの、いつ頃かなぁ！」
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