＊ ページ9
「伊吹くん。その本の感想、覚えているかね」
「うん、『虎になる』ってどんな原理」
「違う！ そんな身も蓋もない方じゃない！」
あっそっか、と若葉は肩を竦めた。少し思い出すように空を見つめた後。
「──私が才人だった頃と、ちょっと似てたかもって。『自分だけで文字を独り占めするなんて』って思いながら、それを当たり前と思うみんなを軽蔑しながら、でもそれを言えなかった。『そんな考えは間違いだ』って粉々にされるのが怖かったから。──それに、思う存分研究ができる環境を手放したくなかったから。ただ思ってるだけで、何もせずに、私側からだけ軽蔑して、相手側からは否定されないのが心地よかったから」
「そうだろう。じゃあ、『高野聖』は？」
「えっと、私だったら絶対に薬売り？ は、許さないぞって思ったんだけど……でも、『快からぬ人と思ったから、そのままで見棄てるのが、故とするようで』はすごくそうだなって思った！ その後の女の人の下りは、理屈は分かっても実態はやっぱり分かんないんだけど」
すらすらと話すのを、腕を組みながら聞いていた彼は、彼女の話が終わったのを境に顎をしゃくった。
「それだよ」
「それ？」
きょとん、と首を傾げる若葉。
「説明されないと分からないかい。どの本の人物の『気持ち』も全部あるじゃないか、君の中に。それも、彼らはどうやったって機械に通してデータが云々、とはできない者たちなのに。君は、ちゃんと彼らの気持ちが分かっている」
ぱちり、と音がしそうな、ゆっくりとした瞬きを若葉はする。それは、目から鱗を落とそうとするかのように。その瞳は、もっと、と訴えかけていた。
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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか？？ そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……（控えろ） (2020年1月1日 0時) (
レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです！ (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます！ 昇華隊の野郎共はいいですよね！！（負けじと大声） (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です！ (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
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