地から見れば空は遠い【派生作品】

＊ ページ35

「すみませんお姉さん。俺らこの辺初めてで……良かったら、案内してくれませんか？」
「お礼で何か奢りますし！ まずは出会えた記念に、どこかで一杯やりませんか？」
　
　真っ昼間からかぁ。それも、そこまでタイプじゃない人と。
　着いていってもいいんだけどなぁ、という思いが少しだけ彼女の中で巡る。うん。けど、だけど、今日は──
　甘ったるく「ごめんなさぁい」とか適当に言おうとした瞬間、見慣れたシルエットが視界に入ります。
　
「すみませんね、そいつとちょっと先約があって」
　
　フィオナはそのまま手首を掴まれ、二人の間から無理やり引っこ抜かれる。そのまま走って、5分。少し人通りの少ない外れへ出る
　
「だから、お前は待ち合わせに早めに来るなっつってんだろ。虫を追い払うとかいうめんどくせぇワンステップがついてくるから」
「ひどーい。私、ヴァー君とのお出かけが楽しみでいても立っても居られなかっただけなのに！」
　
　冗談、とシルエットもといヴァイスは舌を出す。政士もイライも劉も今日は仕事。たまたま非番が被っていたのが彼。その消去法だろう、と。
　

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