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「……『失敗なら誰にでもある』って月並みな言葉でもかけといてやるか。でも覚えとけよ。俺ら昇華隊員にとって、一つの失敗は命取りだからな」
さすがに不憫だ、と思ったヴァイスは未だ痛む頭を左手で抑えながら、右手をグレイの方に差し出す。
その手を握ろうと、グレイも左手を差し出す──と思いきや、乾いた高い音と共に強くヴァイスの手を引っぱたく。
「そういうスカした所が気に入らねえんだよ、サトリ野郎。分かった、俺は失敗した。じゃあてめえが手本見せて見ろってんだ」
ケッ、とぶっきらぼうにグレイは立ちあがる。そして、ズボンについた埃を払い落とし、ほら、というように顎をしゃくった。
「……覚えてろよお前。言われなくてもやるさ。あとどけ、邪魔だ」
ヴァイスの言葉に従い、ひょいと一歩下がる。
ぼんやりとヴァイスの背中を見つめるグレイの頭の中は、正直な話、まだ微妙に夢心地──ならぬ、悪夢心地だった。今でも、目を閉じるだけであの光景の続きが見られそうなほどに。
『精神干渉系の能力は、己の安定あってこそ』
なるほど、とグレイはその言葉を反芻する。考えてみれば当たり前の初歩だが、彼にとっては大きな発見でもあった。
──たまには、サトリ野郎も役に立つじゃねえか。
これが、良くも悪くも拷問成績トップ──ただし行動に問題あり──を生み出す要因になったということを、彼らは知っているのかどうか。
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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか?? そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……(控えろ) (2020年1月1日 0時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです! (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます! 昇華隊の野郎共はいいですよね!!(負けじと大声) (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です! (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
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