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歌い終わって数秒、互いの肩に互いの頭を交差して乗せた2人は、微動だにしなかった。
Aの長い睫毛が伏せられて、照明を浴びてキラキラと光る。
再びそれが開かれた時には、2人ともしんみりとした空気をどこかへやって、満面の笑みを浮かべていた。
大丈夫だよ。そんなに大切に想いあってるんだから。同じメンバーじゃなくなっても、きっとずっと支え合える。
手を振りながら隆平くんが去り、代わりに現れたのは聖母のような顔をした祐くんだった。
Aが甘えた笑顔で彼を見上げると、祐くんは照れくさそうにその頭に幼稚園帽を被せた。
狂ったようなファンの悲鳴に、メンバー全員で笑ってしまう。
松「なにあれ(笑) 」
二「コンセプトが読めなさすぎるんだけど」
イントロと同時にファンがコールをしているから、有名な曲なのかもしれない。
横「『ぼくのいもうと！』！」
と、思っていた矢先に、元気よく祐くんがタイトルコールをするもんだから、6人で吹いた。
横「ちっちゃくてステキなぼくのいもうと 君のヒーローになるって決めたんだ」
『キラキラの瞳 ふわふわの掌』
横「可愛い可愛いぼくのいもうと」
後ろでチロチロと鳴るグロッケンが可愛らしい。
曲に合わせて左右に揺れるAの帽子を取って髪を梳かしたり結んだり。祐くんがAの世話をする振付をする度に悲鳴が上がるのが可笑しかった。
ただ。
面白いはずなのに、何故か涙腺を刺激される。
横「お嫁に行く僕の可愛い妹 最期に僕に告げたのは」
『お兄ちゃんがお兄ちゃんでよかったな』
さすがの表現力だ。ついさっきまで子供らしく歯を見せていたのに、今はもう嫁入り前の美しい女性の表情をしている。
そんな殊勝な妹を演じるAを……いや、というより、「関ジャニ∞から、横山裕の元から去る西野A」を。祐くんは泣き笑いで見守っていた。
祐くんの声が震える。
横「元気でやれよ お兄ちゃんはいつでもおまえの味方」
『大好きなお兄ちゃん』
横「大事な大事な ぼくのいもうと」
祐くんがAの頭を撫でた。宝物を触るように、何度も何度も。
いつの間にか、あんなに湧いていた会場から、すすり泣く声が漏れ響く。
曲が終わるとほぼ同時に、祐くんの目から一粒だけ涙が溢れた。
Aはそれを見て少しだけビックリしてから、躊躇いなく自分の手でそれを拭う。
間違いなくそこには、兄妹愛があった。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
