美少女心理 ページ34
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『あれ、中島？』
中「あっ…おはようございます」
『おー、おはよ！』
年も明けて1ヶ月が経ち、久々に事務所に顔を出してみると、ミーティングルームから中島が出てきた。
相も変わらず整った顔と丁寧な挨拶がもはや懐かしい。
『何してたん？セクゾ関連？』
中「いや、ライブとは別ので」
『そーなんや。おつかれ』
中「ありがとうございます。Aさんは？打ち合わせですか？」
『いや、仮歌入れよかなと思って』
中「なるほど」
お年玉でも渡そうかと思ったその時、またもやミーティングルームの扉が開いた。
菊「あれ？何してるんすか、Aちゃん」
『え？菊池もおったん？』
中島の後ろからひょいと現れたのは、ちょうど仮歌を入れようと思っていた曲の提供先の菊池だ。
調子良さげな笑みを浮かべて、中島の肩に手を回す。
菊「ちょっと2人の仕事入りそうで」
『うわ、そーなん？めっちゃええやん』
中「まだ受けるかどうか迷ってるんですけどね」
ニコニコ笑う菊池と苦笑いを浮かべる中島。
一見正反対の表情に見えるけれど、その実、菊池が悩みに悩んだ挙句ヘラヘラしているらしいことが見て取れる。
似た者同士で抱え込み癖のあるこの2人は、どうやら同じようにその2人宛の仕事とやらを受けるかどうか悩んでいるらしい。
『この後の予定は？』
中「下でダンスリハです」
菊「Aちゃんは？」
『私は菊池のソロの仮歌入れ』
菊「おっ！あざーっす」
『調子ええなぁホンマ』
無理やりテンションを上げているらしい態度を見て、私は口角を上げた。
『終わったらご飯でも行く？』
中「えっ、いいんですか」
『ええよ。コッチ時間見えへんから、もし先上がったら適当に店行っといてくれてええで』
中「ありがとうございます」
律儀な礼をする中島と、少しだけ作り笑いを引っ込めた菊池は、そのまま連れ立って歩いて行く。
その後ろ姿が妙に湿気っていて、余程悩んでいるらしいことを察した。
さて、と。
菊池と中島は気がかりだけど、それより先に私にはすることがある。
スマホで翠とちーちゃんに餌をやってから、私は上のレコーディング室に向かった。
さっと信ちゃんに予定が入ったと連絡を入れ、軽く打ち合わせを済ませる。
上げてくれた音源が予想通りの仕上がりで安心した。
『じゃあとりあえず菊池のからいきます。お願いします』
2ヶ月ぶりにマイクに向かう。
クリアになる思考の片隅で、スマホが明るく光った。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
