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村「でっかめのブランケットやったら積んであるけど、持って降りるか？」
『天才やん。ありがとう』
エスコートされるがままに車を降りて、ブランケットを肩にかける。
結構異形なファッションになってしまったけれど、仕方がない。寒いし。
『信ちゃんは寒ないん』
村「今は大丈夫やな。ずっと外おったらどうなるか分からんけど」
電波塔の方へと導かれ、ゆっくりと歩みを進める。
私たちの手が重なることはなかった。
村「人少ないな」
『なんでやろ。こんなええ天気やのに』
村「寒いからやろ(笑) すまんな。ここまでやとは思わんかったわ」
『寒いからこそええんやん。夜景綺麗に見えんで』
公園はポツポツとしか人が居なかった。
その全員が目の前の恋人に夢中で、私たちになんか目もくれない。
村「おお……綺麗な」
『ホンマや』
とりわけ人の少ないところを選んで、柵にもたれる。
山肌を登ってきた風がバタバタとブランケットを揺らした。
『寒ない？』
村「さすがにちょっと寒いな(笑) 」
『入る？』
ブランケットを広げると、信ちゃんは目を丸くしてから「ありがとう」と呟いた。
大きめとはいえ、通常サイズのブランケットだ。
当たり前のように距離は縮まって、私たちの肩はぶつかる。
そんなつもりなかったのに、触れ合ってしまう状況を作ってしまって頭を抱えたくなった。
別に今更、一緒のブランケットにくるまったからといってなにかある訳では無いけれど、さっきの今というのが良くない。
道理であんなに信ちゃんが驚いた顔をしたわけだ。
村「なあ、ニシ」
『……はい』
信ちゃんが間近で私を見ているのがわかる。
彼の息が私の頬にかかっているから。
村「なんで手なんか、」
『ごめん』
期待のこもった声に怖くなった。
ごめん。そういう事ちゃうねん。
ただ、私は。信ちゃんが離れてくのが嫌なだけで。
付き合いたいとかじゃないねん。
信ちゃんと同じ気持ちとかじゃないねん。
『ちょっと甘えたくなっただけ』
ごめん。信ちゃんが23年も想ってくれるような、いい女じゃなくてごめん。
自分のことばっか考えてる、酷い女でごめん。
村「ニシ」
『ん？』
信ちゃんの大きな目が、私の目を覗き込んだ。
村「ちゃんと腹割って話してほしいんやけど」
『なにが？』
村「わかるやろ」
お説教モードに入られたらたまったもんじゃない。
慌てて私はブランケットの檻から逃げた。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
