死んで花実が咲くものか 3 (ページ4)

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チラリと目を合わせ、微笑むことも無く、すばるくんが息を吸う。

渋「 愛したくて愛されたくて溺れちゃうくらい愛がしびれてる Oh no... 笑い顔も奪い抱きしめたい」

劈くような悲鳴が上がる。

まさかこの曲を選んでくるとは、という驚きから苦笑してしまった。

ピアノアレンジがされているからか、ジャズチックかつメローな曲調は、大人になったすばるくんとAにしか生み出せない、『愛してる愛してない』だった。

Aの指から流れるメロディーに、すばるくんの真摯な歌声が乗っかる。

この歴代最高とまで言われたシンメが2人きりで立つ最後の舞台。

皆が歴史の行く末を見守る。

『愛してる愛してない溺れちゃって濡れていたい』

渋「愛だろう愛しかない誤魔化せない愛が苦しい」

『愛してる愛してないもがくだけで胸が痛い Yeah』

渋「奪いたい奪えない震えるほど愛が苦しい」

渋「『これっきりにしたい』」

ピアノの演奏が終わると同時に、すばるくんがAに歩み寄った。

細い腕でAの肩を壊れんばかりに抱きしめ、その顔を近づける。客席から見てもわかるくらい、その後ろ姿は震えていた。

耳元で何かを囁くすばるくんの背をポンポンとあやして、Aが微笑む。

そして一言二言交わしてから、すばるくんはぐいと袖で顔を拭って、カメラに向かって深くお辞儀した。

Aも合わせて頭を垂れる。

荘厳な拍手が場を支配した。

スタスタと退場するすばるくんを追うカメラ。その後ろで、Aがスツールに移動する。

すばるくんに代わって歩いてきたのは、信五くんだった。

彼はヴァイオリンをAに手渡し、自分はピアノ椅子に腰掛ける。

さっきのすばるくんとは真逆で、信五くんはAみたいに吹っ切れた笑顔を浮かべていた。

見つめ合い、笑い合い、『angels』の前奏が始まった。

『 今の痛いくらいの幸せは他の誰かのために捧ぐ 』

村「自分のためじゃなくても貴方のためだけでも」

Aの技巧的なピアノと違って、優しく包み込むような音色が2人を包む。

信五くんの演奏を名残惜しそうに眺めながらヴァイオリンを奏でるA。

一方で、真っ直ぐな瞳をしてAの門出を見守る信五くん。

銀色のスーツが照明に当たって輝いているのも相まって、2人はまるで天使みたいに綺麗だった。