死んで花実が咲くものか 3 (ページ2)

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幕が上がる。

見慣れない緞帳の後ろから現れたのは、今までにないくらい緊張した面持ちの7人と。

そして、今までにないくらい穏やかな顔をしたAだった。

義足を付けているなんて分からないくらい、自然に袴を着こなして、Aはニヤリと笑った。

『えいたああああああぁ！！！！』

叫び声と共に、隆平くんによるNOROSHIのベースソロが始まる。

ビリビリと怖いくらいの音圧と、近くの映画館から拾っている悲鳴が松竹座を貫いた。

ぶんぶんと頭を振ってベースを掻き鳴らすその姿は、病み上がりとは到底思えない。

『望んだまま手にするは女王』

「「手を引くのは以下その他」」

渋「私なんてが流行りの枕詞」

『あら控えめなのねガールズ？』

カメラに向かって妖艶に微笑むその姿に、背筋が泡立つ。

スツールに腰掛けたまま演奏しているというのに、物凄い圧倒感だ。

最後のAのベースソロが終わって、中継先の拍手が届いた。

間髪入れずに、イエパンのイントロが始まる。

Aは前髪をかきあげて、幸せそうに歌詞を紡いだ。

『いつかこの場所でもう一度逢えたらきっとそれもHappiness！』

さっきまでと打って変わって、悪戯っぽくピースサインをしてみせるその姿に、見ているこっちも笑顔がこぼれる。

もう一度、彼女がここに戻ってくることは無いだろうけれど、きっとファンにとっては救いになる歌詞に違いない。

Aは何度も寂しげに唇を噛む亮くんに目を合わせてベースを弾いていた。

「泣いてるの？早くない？(笑) 」

相「………うん。なんかやっぱダメだわ。泣くとは思ってたけどさあ」

Aも泣きべそをかいた雅紀くんを見つけて指をさして笑った。

『ふりむくわけにはいかないぜー！！！』

今の状況にピッタリなタイトルを叫んで、ギターラインが食い気味に攻め込んできた。

章大くんのソロに乗って、Aがベースで入ってくる。

恍惚とした表情で先陣を切るその様子は、ライブでないと見られない2人の裏の顔だ。

ぼんやりとしているように見せて実際は音に敏感な章大くんと、適当なフリをして、その実、音を大切にするA。

渋「打ち抜けよド真ん中」

『ざわついた心今夜でケリをつける』

渋「『ぜったい！！！』」

そして何より音楽を愛するすばるくん。

3人の音が重なって、松竹座をビリビリと震わせた。