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覚悟を決めたAちゃんは、深呼吸をしてから一息に衝撃の事実を告げた。
『あのね、私、6月にお母さんになるの』
は？
いや、は？！？！
大きな翔くんの瞳が落ちそうなくらい見開かれている。
相葉くんは眉をひそめて身動ぎもしない。
そしてきっと俺は、ビックリするくらい間抜けな顔をしているんだろう。
櫻「マジ？」
『大マジ』
翔くんに応えてAちゃんが薄く笑う。
相「えっ……と、おめでとう？」
『ありがとう』
祝福の言葉に礼を返すその様子は、一見すると母になるという事実を受け入れているようにも見えてしまう。
それがどうも耐えられなかった。
松「辞めるの？」
『辞める。私、子持ちのアイドルはどうしても受け入れられないから』
相「V6兄さんとかいるじゃん」
『私が、となるとダメなの』
松「それは余りにも、」
勝手じゃない？と言う言葉を喉元で危うく止める。
授かった人にそんな言い草が酷いことくらいは、動揺している俺でもわかったからだ。
ただ、目ざといAちゃんには全てお見通しのようだった。
『狡くてごめんね』
大「謝ってどうにかなる事じゃないけど」
何となく祝福モードを出していた相葉くんが一気に顔を引き締めた。
リーダーの顔つきは部屋を出る前よりさらに厳しい。
彼の意向を継いだかのように、ニノがAちゃんを尋問し始めた。
二「どーすんの？」
『……電撃引退ってことで辞める』
二「妊娠の発表は？」
『しない』
二「バレると思うけど」
『バレないよ。郊外に一軒家買ったから。そこでひっそり暮らすもん』
二「記者は追いかけてくるよ」
『それでも隠す』
平行線を辿る会話の途中で、ニノは眉間に皺を寄せた。
二「どーにか出来ると本気で思ってんの」
『思ってる。1人でもどうにかする』
櫻「ちょっと待って」
ヒートアップしかけた議論を止めたのは、未だに現実を受け止められていない顔をした翔くんだった。
櫻「1人って何？」
Aちゃんが口を抑えた。
大「旦那は？」
まさか。
俺が1番聞きたくなかった言葉を、彼女は俯きがちに絞り出した。
『…………捨てられた』
途端に全員が顔をしかめる。
このご時世にそんなクソ男がいるなんて信じられない。
そして彼女のような素晴らしい女性を、子どもごと捨てるだなんて所業が許せない。
退所の話はどこかへ飛んで、俺らの脳内はAちゃんがシングルマザーになるという事実でいっぱいになった。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2021年12月30日 22時
